シルヴィウス
 「ギ・ド・モーパッサン」

Silvius, « Guy de Maupassant », le 1er mai 1883



(*翻訳者 足立 和彦
  著作権は執筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)

解説 1883年5月1日、雑誌『若きフランス』 La Jeune France に掲載された、シルヴィウスによる、モーパッサンを題材にした詩篇。
 4月に発売されたモーパッサン最初の長編小説『女の一生』に対し、当時、駅の売店での書籍販売を独占していたアシェット書店は販売の自粛を決定した。シルヴィウスなる作者によるこの詩篇は、そのことを諷刺したものである。
 アシェットの処置に対し、モーパッサンは直ちに行動を起こす。4月20日付「フィガロ」紙には、代議士諸氏に宛てたモーパッサンの手紙が掲載され、アシェット社の独占を法に反するものとして訴えている。25日付の同紙はモーパッサンが時の大臣クレマンソーと面会し、後者は議会でこの問題を取り上げることを承諾した旨を告げる。30日、モーパッサンは改めて同紙に「アシェットの独占」と題する記事を掲載、1845年7月の法律の条文を詳しく論じながら批判を展開した。
 結果としてアシェット社は販売自粛を撤回することになる。そして、この事件が宣伝となって、『女の一生』の成功に寄与することになったとも言われる。ある証言では直ちに40刷(1刷500部)に達したという(Guy Tomel, "Guy de Maupassant", Journal des Débats, 7 juillet 1893)。
 モーパッサンの作品がその描写の率直さ、大胆さ故に当時はスキャンダラスなものでありえたことを、この些細な事件は証明している。ここに訳出する詩は、モーパッサンにむしろ好意的ととれるものであるが、諧謔的に『女の一生』の作者に、もっと「貞淑」になることを勧めている。
 さてこの詩の作者は、Nadine Satia 氏によれば Léon Valade (1841-1884)である。高踏派の詩人でヴェルレーヌの友人でもあり、またランボーとも関わりを持ったことで知られている。代表作は詩集 A mi-côte (1874)『中途に』。結核のために早くに亡くなった。
 以下に、訳文と合わせて原文も掲載する。
 なお、オクターヴ・フイエ、およびジョルジュ・オーネは当時ロマンチックな作風で人気を博した作家。モーパッサンはフイエに批判的だった。


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 「韻文うわさ話」

 ギ・ド・モーパッサン

 あの厚顔なるモーパッサンは
 駅の人々の羞恥心を憤慨させる。
 猥褻な言葉を、たくさん言いはしなかったか
 あの厚顔なるモーパッサンは!
 コサック兵やブルガリア人をも
 凌駕するシニックな態度で、
 あの厚顔なるモーパッサンは
 駅の人々の羞恥心を憤慨させる。

 おお小説家よ、知らなかったのか、
 鉄道路線の厳正さを?
 鉄道とは「美徳そのもの」!
 百合だけが、無垢をまとって、
 あの清純なる線路を駆け巡る・・・
 おお小説家よ、知らなかったのか、
 鉄道路線の厳正さを?

 ドラゴンのように煙を吐きながら、
 機関車は貞淑ぶっている。
 あらゆる俗語を嫌悪して、
 ドラゴンのように煙を吐きながら。
 列車の貞淑な屋根は
 ただ処女だけしか迎えはしない!
 ドラゴンのように煙を吐きながら、
 機関車は貞淑ぶっている。

 旅人にとって危険なのは、
 列車が脱線することではない。
 夢見るあなた達は尋ねる、何が
 旅人にとって危険なのか?
 それは彼らが真っ赤に染まること
 額まで、『女の一生』を読みながら!
 旅行者にとって危険なのは、
 列車が脱線することではない。

 悔悛せよ、若き作家よ、
 蒸気が君を売り歩くために
 そうでなきゃ、君の才能も無に帰する!
 悔悛せよ、若き作家よ。
 強すぎる君の文章という
 ワインに澄んだ水を注ぐべし。
 悔悛せよ、若き作家よ、
 蒸気が君を売り歩くために。

 おおギィ! オクターヴ・フイエを盗むんだ
 たくさんのオーネが既に頂いている
 君の文体を心地よくするために、
 おおギィ、オクターヴ・フイエを盗むんだ!
 あの聴罪証明書、すなわちは検印を
 受ける権利を得るために、
 おおギィ、オクターヴ・フイエを盗むんだ
 たくさんのオーネが既に頂いている!
                    シルヴィウス

『若きフランス』、1883年5月1日付、59-60頁。

GAZETTE RIMÉE

Guy de Maupassant

Cet effronté de Maupassant
Révolte la pudeur des gares :
Des horreurs, n'en dit-il pas cent,
Cet effronté de Maupassant !
Par son cynisme dépassant
Les Cosaques et les Bulgares,
Cet effronté de Maupassant
Révolte la pudeur des gares.

O romancier, l'ignorais-tu,
La rigueur des lignes ferrées ?
Elles sont « la même vertu » !
O romancier, l'ignorais-tu ?
Le lis seul, de candeur vêtu,
Parcourt ces routes éthérées...
O romancier, l'ignorais-tu,
La rigueur des lignes ferrées ?

Bien que fumant comme un dragon,
La locomotive est bégueule ;
Elle répugne à tout jargon,
Bien que fumant comme un dragon.
Le toit honnête du wagon.
N'abrite que la vierge seule !
Bien que fumant comme un dragon,
La locomotive est bégueule.

Le danger pour les voyageurs,
Ce n'est pas que le train dévie.
Quel est, demandez-vous songeurs,
Le danger pour les voyageurs ?
C'est qu'il leur monte des rougeurs
Au front, en lisant
« Une vie ! »
Le danger pour les voyageurs,
Ce n'est pas que le train dévie.

Amende-toi, jeune écrivain,
Pour que la vapeur te colporte ;
Sans cela, tout ton art est vain !
Amende-toi, jeune écrivain.
Mets de l'eau claire dans le vin
De ta prose quelque peu forte.
Amende-toi, jeune écrivain,
Pour que la vapeur te colporte.

O Guy ! pille Octave Feuillet,
Où maint Ohnet déjà grapille,
Pour te faire un style douillet,
O Guy, pille Octave Feuillet !
Pour avoir droit à ce billet
De confession : l'estampille,
O Guy, pille Octave Feuillet,
Où maint Ohnet déjà grapille !


               SILVIUS.

La Jeune France, 1er mai 1883, p. 59-60.




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