モーパッサン 後世の評価
Critiques postérieures sur Maupassant
モーパッサン 後世の評価リスト
- ギュスターヴ・ランソン 「ギ・ド・モーパッサン」 1951 (24/01/2012)
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20世紀前半のフランスにおいては、象徴主義の洗礼を受けて出発した多くの文学者からは、モーパッサンは「自然主義」を代表する作家として、既に古いもの、読み直す価値のないものとみなされることが多かった。Artine Artinian, Pour et contre Maupassant, enquête internationale. 147 témoignages inédits, Paris, A. -G. Nizet, 1955. は、その消息を伝える貴重な資料となっている。なお、右画像はギュスターヴ・ランソン (1857-1934)、20世紀前半の講壇批評の重鎮であり、彼の評価も限定的なものであったと言える。
その間、モーパッサンはイギリス、アメリカや日本をはじめとする外国で広く読まれた。イギリスの作家サマセット・モーム (1874-1965) がモーパッサンを評価していたことは広く知られている。
フランスにおいては、1950年代からアカデミックな場でモーパッサンを研究する者が現れ始め、70年代に中短編小説が権威あるプレイヤッド叢書に入り(ルイ・フォレスチエ編)、長編がこれに続いた。生前からモーパッサンの文章は、その簡潔さ、正確さ故に「古典的」と評されていたが、今日では中学・高校の文学(国語)の授業で必ず採用される作家の一人であり、廉価なポッシュ版(日本の文庫に相当)の出版は跡を絶たない。
19世紀末の新聞紙上では短編小説が重要な位置を占めていたが、新聞の形態の変化とともに、フランスでは短編小説が広く書かれ、読まれることはなくなった。そのような状況の中で、モーパッサンの作品は短編小説の古典と位置づけられるに至ったといえる。19世紀の農民や小ブルジョアを描く彼の文学世界が、「古き良きフランス」への憧憬を掻き立てるという一面も窺われるかもしれない。
ここでは作者の死後に現れた批評を取り上げてご紹介してゆきたい。モーパッサンを見る人々の視線がどのように変遷してきたのかを辿ることができればと思う。