第173信 エミール・ゾラ宛
Lettre 173 : À Émile Zola
解説 1880年4月17日、『メダンの夕べ』が刊行された。本書簡から、早々に3版を売り切ったこと、印税についての取り決めがなされておらず、モーパッサンたちを焦らせていた様子が窺える。
追伸で触れられているのは、アルベール・ヴォルフ(1825-1891)による記事「パリ通信」(『フィガロ』、1880年4月19日)。そのなかでヴォルフはまるでメダンが有名な町であるかのように謳っていることを揶揄し、序文を「中学生の悪ふざけ」と呼んだうえで、「『メダンの夕べ』は一行の批評にも値しない」と切り捨てている。
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[1880年4月]
先日、アレクシが『メダンの夕べ』に関して幾らか手に入れられるだろうかと尋ねてきました。――今朝、それについてエニックに話しましたが、彼もこの問題を解決したいと思っていながら、シャルパンティエにその話をよくしないようでした。そこで私は我々の感じのよい出版者に会い、骨董品を買いたがっている振りをして、それを口実に、いつになればすでに売れた3版について幾らか得られるだろうかと尋ねました。彼はあなたに相談してから私に伝えると答えました。彼が版ごとにあなたに500フラン払うことは決まっています。その点に関しては、彼は何ら問題があるとも言いませんでした。
彼にお会いになる時にこの問題について話し、どのように我々が金を得られるか決めていただければ嬉しいです。私たちは六分の一ずつ分け合うというように私は言いましたし、彼もそう決めているようでした。それ以外のやり方はふさわしくないでしょう。行数の計算は馬鹿げています。どうぞこの問題にけりをつけてください。私が手にするのがおおよそ250フランでも気を悪くしたりはしませんから。
心より握手を。
ギィ・ド・モーパッサン
そしてヴォルフーー!!!――
「正義」を信じるエニックは息を詰まらせていました。――シャルパンティエは本が売れることを信じるのをやめました。私としては、ヴォルフが我々を卑劣漢呼ばわりしなかったことだけが残念です!
Guy de Maupassant, Correspondance, éd. Jacques Suffel, Évreux, Le Cercle du bibliophile, 1973, t. I, p. 274-275.
(*翻訳者 足立 和彦)
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