『詩集』
Des vers, 1880

1880年初頭、モーパッサンはそれまで書き溜めた詩篇をまとめて一冊の詩集にすることを計画し、ゾラと親しく、『メダンの夕べ』刊行予定のシャルパンティエに原稿を送付した。ただし、シャルパンティエは必ずしも『詩集』出版に乗り気ではなかったようで、モーパッサンはフロベールに、出版者を急かす手紙を送ってくれるように頼んでいる(第160信を参照)。最終的に、『メダンの夕べ』に遅れること1週間ほどで刊行された。
19編の詩、および韻文劇『昔がたり』より成っており、収録作の執筆時期は1860年代末から80年にまでわたっている。
詩集の冒頭には、以下のような献辞が掲げられている。
ギュスターヴ・フロベール
全愛情を込めて敬愛する、高名にして父なる友
また、何にもまして賞賛する完全無欠な師へ
全愛情を込めて敬愛する、高名にして父なる友
また、何にもまして賞賛する完全無欠な師へ

十代後半より本格的に始まった詩作は、二十代を通して続けられた。この時期、モーパッサンは自らをもって詩人と任じていた。その詩作品には大胆なレアリスムの適用が見られるが、同時に現実の世界を詩的なものへと変貌させ、純粋化、結晶化しようとする試みでもあった。
なお、1880年末には第3版が刊行され、その際、フロベールによる弟子擁護のための公開書簡が掲載された。
また、本詩集は1884年に、豪華判として再版されている(5月31日、アヴァール書店)。出版の前にモーパッサンは推敲を加えていたが、失火により原稿を喪失したために元のままとなったという。いずれにしても小説家モーパッサンは、詩人モーパッサンを完全に否定した訳ではなかったと言えるだろう。
作品リスト
- 壁
- 日射病
- 恐怖
- 征服
- 雪の夜
- チュイルリー公園の愛の使い
- 水辺にて
- 野雁
- 発見
- 鳥刺し
- 祖父
- 欲望
- 最後の逃走
- 十六歳の散歩
- 慎みのない請願
- 月光の歌
- 愛の終わり
- 通りの会話
- 田舎のヴィーナス
- (「昔がたり」) 「劇」の項目に掲載