モーパッサン 他詩編
Autres poèmes de Maupassant
(*翻訳者 足立 和彦)

その中心となるものは『詩集』に収録されることになるが、そこに含まれなかった作品も多数存在する。いわば習作というべきこれらの詩編に、青春時代の作者の姿、そして独自の詩情を模索する様子を窺うことが出来る。
69年頃の詩作品にはミュッセの影響が濃厚であるが、普仏戦争体験の後、モーパッサンはロマンチスムと決別し、ペシミスムが影を落とすようになる。「昨夜通りで見たもの」「(青春はもはやなく・・・)」の二編は、都会の情景を描写したもので、ボードレール(右画像)の模倣とも注釈されるもの。だがこれ以降、モーパッサンはパリという街に詩情を見出すことは試みず、むしろ自然へと赴く。
「十六世紀」はあるいはロンサール風の詩作といえるかもしれないが、実際のところはまだロマンチスムの痕跡を感じさせる作品。18歳の一時期に師事したブイエ風の小品なども試みた後、レアリスムに則る独自の作風へと移ってゆくと言えるだろう。
『詩集』と合わせてこれらの詩作品を眺めることで、1880年までの「詩人モーパッサン」の全体像をご覧頂きたい。
作品リスト
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フォーヌの欲望
Désirs de faune
Désirs de faune
僕に愛を啓示してくれた女性へ
おお! 肉が膨れ、立ち上がって燃え立つ時!
魂全体がそこにあり、張り詰め、あえいで、
頭は狂乱し――欲望に泡を吹いて、
これ以上に焼け付く快楽をどこに求めてよいか、
燃えるような舌を裸の股の間に差し入れればよいか分からない!
二本の腕は肉付きのよい尻の下でこわばり、
彼女を吸い、その匂いを嗅ぎ、舐め、
雄山羊とサチュロスの興奮で、
血まで吸い、ねじり、からみつく様は
人間蛸のようで、飲み――そして笑う
彼女の痙攣する様を。そしてその体を感じる
体は恐るべき快感の内に砕け、膨れ
痙攣、痙縮、激昂、
息詰まらせ、むせび泣き、野蛮な叫び声を上げてうなる!
[1874年]