レオン・エニック

Léon Hennique



ユベール・フロリモン・アントワーヌ・レオン・エニック
Hubert Florimond Antoine Léon Hennique, 1850-1935


レオン・エニック  レオン・エニックは小説家、劇作家。1850年11月4日、グアドループのバス゠テールに生まれた。父プリヴァ・フランソワ・アガトン・エニック(1810-1870)は海軍の軍人で、最後はフランス領ギアナの総督を務めた人物。母はエロイーズ・クラリス・ピオ。兄アルテュール(1844-1916)、オーギュスト(1845-1891)は共に海軍に入隊する。
 ブレスト、サン゠カンタンで学業を修めたのち、パリでイエズス会経営の中等学校を卒業。モーリス・タルメールと親交を結ぶ。1870年に法律の勉強を始めるも、普仏戦争が始まり、エーヌ県の国民遊撃隊に編入された。砲兵だった彼はラ・フェールの戦いの後、11月27日に捕われ、ドイツ南部のウルムで捕虜生活を送った。
 両親が亡くなったあと、少なからず遺産があったために(モーパッサン、ユイスマンス、セアールのように)役所勤めはせずに作家活動を行う。1876年、『文芸共和国』を介してJ・K・ユイスマンスと出会う。エミール・ゾラへの敬愛を通じて、モーパッサン、アンリ・セアールポール・アレクシらとグループを形成。
 76年10―12月に『秩序』紙に最初の長編『エリザベート・クロノー』を連載。18世紀の狂信的なジャンセニスト「痙攣派」を描いている。
 77年1月23日、キャプシーヌ大通り39番地で『居酒屋』に関する講演を行う。ヴィクトル・ユゴー『九十三年』(1874)より『居酒屋』が優れていると宣言し、マンデスら高踏派の顰蹙を買った。批判を受け、エニックは「レアリスム」と題する記事で自説を述べている(『ゴーロワ』紙、2月15日)。「我々の考えでは作家は医師であり、観察を書き留めながらそれを詳説しなければならず、結論づけたり、いつでもうんざりさせる教訓を提示したりすることを気にかけるべきではありません。(略)我々は芸術に見受けられる理想を非難しました。なぜなら、近年、人々はそれを後宮の番人向けの概念にしてしまったからであり、型にはまった美を崇拝するのは狂信だからです」
『献身的な女』表紙 Source gallica.bnf.fr / BnF  1878年に長編『献身的な女』を発表(シャルパンティエ書店)。「戦友アンリ・セアールとJ・K・ユイスマンスにこの自然主義小説を捧げる」という献辞。発明家の父が遺産を狙って娘を殺害するという内容で、ゾラははじめ苦言を呈したが、記事では称賛している。
 1879年に『エリザベート・クロノー』を刊行(ダンテュ書店)。同年3月、クリュニー座にてジョルジュ・ゴッドと共作『ダスシー皇帝』上演。また、セアールとともにゾラから『プラッサンの征服』の舞台化の許可を得て取りかかる。『フォージャ神父』の原稿は完成したが、上演には至らなかった。
 1880年、『メダンの夕べ』に「大七事件」を寄稿。群集の狂気を主題として、普仏戦争下、兵舎の兵士たちによる娼館〈大七〉襲撃を描いている。同年、狂信的なカトリック教徒を描く歴史劇『ポントー殿の偉業』出版(デルヴォー書店)、序文に「ロマンチスムについてのロマンチックな冗談」と記している。
 1881年には短編集『ふたつの小説』(「フランシーヌ・クロワレックの葬儀」、「バンジャマン・ローズ」、キステメケール書店)、自然主義的パントマイム『懐疑的なピエロ』(ユイスマンスと共作、ルヴェール書店)を発表。
 81年4月20日、ルイーズ・デュポン゠シャトランと結婚。ルイーズの父は国立古文書館の重要な地位にあった。結婚式にはモーパッサン、ユイスマンス、セアール、シャルパンティエなどが参列したが、ゾラは出席せず、アレクシは招待されなかった。82年、娘ニコレット(1882-1956)誕生。
『エベール氏の災難』表紙 Source gallica.bnf.fr / BnF  1884年には最も自然主義的な長編『エベール氏の災難』(シャルパンティエ書店)を発表する。「わが友ゾラへ」の献辞がある。妻の不倫を発見したエベール氏は配置転換を願い出るだけでよしとして、「災難」を甘受する。「明確に現れたオリジナリティ、獣人についてのとても興味深い感性がある。君の描く不倫は真に愚劣で震撼させる。愛人同士の会話はとりわけ驚くべきもので、写真のように残酷だ」(ゾラの書簡、1883年11月25日)。
 その後はより自由な作風となり、グアドループを舞台として子どもの視点から語る中編小説『ブフ』(モーパッサンへの献辞、トレス&ストック書店、1887)、交霊術にまつわる『ある性格』(エドモン・ド・ゴンクールへの献辞、トレス&ストック書店、1889)、アルコール中毒のイギリス人女性との恋愛を一人称で回想する『ミニー・ブランドン』(ドーデへの献辞、シャルパンティエ&ファスケル書店、1899)などを執筆した。
 80年代後半に入るとゾラと疎遠になる一方、エドモン・ド・ゴンクールと近しくなり、「屋根裏」にも通った。演劇にも関心を寄せ、1887年3月30日、「自由劇場」のこけら落としでは『ジャック・ダムール』(ゾラの短編の翻案)が好評を博した。11月に歴史劇『エステル・ブランデス』、88年12月には『アンギャン公の死』も上演した。
 「自由劇場」以外の劇場でも作品が上演されている。歴史劇『愛』(オデオン座、1890年3月)、『嘘つき女』(アルフォンス・ドーデと共作、ジムナーズ座、1892年2月)、『他人の金』(オデオン座、1893年2月)、『ふたつの故郷』(アンビギュ=コミック座、1895年3月)、『小教区』(ドーデと共作、アントワーヌ座、1901年1月)、歴史劇『王の王妃(ジョアネス・グラヴィエと共作、オデオン座、1909年11月)。なお、92年にシェークスピア『オセロ』翻案を試みるが、上演には至らなかった。
 1896年、エドモン・ド・ゴンクールが死去、エニックはアルフォンス・ドーデとともに遺言執行人を務め、アカデミー創設に尽力した。1900年、アカデミー・ゴンクール会員。ユイスマンスの没後、1907年から会長を務めたが、1912年に辞任する(後任はギュスターヴ・ジュフロワ)。
 1935年12月25日、レオン・エニックはパリにて没。エーヌ県リブモンにて埋葬された。


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『今日の人々』 no 314 レオン・エニック Source gallica.bnf.fr / BnF  1882年9月、モーパッサンは「椅子直しの女」をエニックに捧げたほか、1883年には「大胆な者たち」(『ジル・ブラース』、11月17日)のなかで『エベール氏の災難』について論じている。Suffel 版書簡集にエニック宛の書簡は2通のみ(第192信第691信)だが、ほかに少なくとも82-87年にかけての3通が知られている。Cf. Christoph Oberle, « Trois lettres inédites de Maupassant à Hennique », Bulletin Flaubert-Maupassant, no 7, 1999, p.141-148. 1887年4月3日の書簡では、「自由劇場」のこけら落としの招待に対する礼を述べている(モーパッサンはエトルタに滞在中で観劇できなかった)。
 エニックによるモーパッサンについての言及は知られていない。1930年、『メダンの夕べ』刊行50周年を記念してファスケル社より再刊された際には、エニックが「序文」を記し、唯一生き残った著者として往時を回想している。

 なおこの一文は以下に多くを負っている。
  • « Dossier Léon Hennique », composé par Jean de Palacio, Les Cahiers naturaliste, no 71, 1997, p. 5-148.


Œuvres de Léon Hennique



Romans, contes et nouvelles
  • La Dévouée, G. Charpentier, 1878.
  • Élisabeth Couronneau, E. Dentu, 1879.
  • Deux nouvelles, Bruxelles, H. Kistemaeckers, 1881 (« Les Funérailles de Francine Cloarec », « Benjamin Rozes »).
  • L’Accident de M. Hébert, G. Charpentier, 1884.
  • Pœuf, Tresse et Stock, 1887.
  • Un caractère, Tresse et Stock, 1889.
  • Minnie Brandon, G. Charpentier et Fasquelle, 1899.

  • Henry Céard – Léon Hennique, Deux nouvelles naturalistes, postface par Michel Lopes, Éditions Mille et une nuits, 2000 (« La Saignée », « L’Affaire du Grand 7 »).
  • L’Affaire du grand 7, Benjamin Roses, Pœuf et autres nouvelles, édition de René-Pierre Colin, Éditions du lérot, 2003.

Théâtre
  • Léon Hennique et Georges Godde, L’Empereur Dassoucy, comédie en trois actes, représentée pour la première fois sur le Théâtre de Cluny, le 2 mars 1879 (G. Charpentier 1880).
  • Les Hauts Faits de Monsieur de Ponthau, Derveaux, 1880.
  • Léon Hennique & J.-K. Huysmans, Pierrot sceptique, pantomime, dessins de Jules Chéret, Édouard Rouveyre, 1881.
  • Jacques Damour, pièce en un acte, tirée de la nouvelle d’Émile Zola, représentée au Théâtre-Libre, le 30 mars 1887 (sur le Théâtre national de l’Odéon, le 22 septembre 1887, G. Charpentier, 1887).
  • Esther Brandès, pièce en trois actes, représentée pour la première fois sur le Théâtre Libre, le 11 novembre 1887 (Tresse et Stock, 1887).
  • La Mort du Duc d’Enghien, en trois tableaux, représentée pour la première fois au Théâtre-Libre, le 10 décembre 1888 (Tresse & Stock, 1889).
  • Amour, drame en trois parties, représenté à l’Odéon, le 6 mars 1890 (Tresse & Stock, 1890).
  • Alphonse Daudet et Léon Hennique, La Monteuse, comédie en trois actes, représentée au Gymnase, le 4 février 1892 (Flammarion, 1895). L’Argent d’autrui, comédie en cinq actes, représentée pour la première fois sur le Théâtre national de l’Odéon, le 9 février 1893 (Tresse & Stock, 1894).
  • Deux Patries, drame en cinq tableaux, représenté pour la première fois sur le Théâtre de l’Ambigu-Comique, le 16 mars 1895 (Charpentier et Fasquelle, 1895).
  • Alphonse Daudet et Léon Hennique, La Petite Paroisse, pièce en quatre actes et six tableaux, représentée au Théâtre-Antoine le 21 janvier 1901.
  • Léon Hennique et Johannès Gravier, Reine de rois, drame historique en prose en cinq actes et six tableaux, représenté à l’Odéon, le 17 novembre 1909 (Imprimerie de L’Illustration, 1909).


(画像:Source gallica.bnf.fr / BnF)


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