第235信 エミール・ゾラ宛
Lettre 235 : À Émile Zola
(*翻訳者 足立 和彦)
解説 『メゾン・テリエ』発売直後のゾラ宛の書簡。問題になっているのは5月12日付(11日発売)『レヴェヌマン』 L'Evénement 紙掲載のレオン・シャプロン Léon Chapron の記事「クロニック・ド・パリ」。モーパッサンの文言は婉曲で分かりにくいが、シャプロンは、「脂肪の塊」で成功したモーパッサンが自分の商売敵になるのを恐れたゾラが、モーパッサンに関する記事の掲載に乗り気でないとからかい、またそのことでモーパッサンがゾラに対して不満を抱いていると暗にほのめかしている。モーパッサンの素早い反応は、誤解からゾラの心象を悪くしないようにという配慮による。マニャールは当時の『フィガロ』紙の編集長。ゾラの記事「アレクシとモーパッサン」は、2ヶ月後にようやく掲載されることになった。
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この水曜日 [1881年5月11日]
親愛なる師にして友に
『レヴェヌマン』紙が届けられたところですが、そこにシャプロンのクロニックが載っていて、それに私はとてもうんざりしています。このミスターが私の本を「汚物」や「不快な書物」扱いすることは、私にはまったくどうでもいいことですが、終わりの文章の中、「私は彼の顔を一度も見たことがないと急いで付け加えておくが」の言葉の内には特別の背信の意図があると思いますし、あなたの記事が出ないことで私が「彼に対してではなく」誰かに不満を抱いていることを示そうとしていて、そうしたことが、マニャール氏に対してあなたが固持していないかのように疑わせる言葉で書かれているのです。
さて、上記マニャール氏が『メゾン・テリエ』の有料広告を挿入するのを断って以来、あなたの記事が出ないだろうことを私は十分に確信していたので、そのことを何人にも告げましたが、あなたがその記事を書くより前のことでした。それ以来、この断られた記事のことについてしばしば話題にされ、もちろん私は自分の憂鬱を表明しますが、しかしあなたに対しての完全な敬意を込めてですし、あなたの繰り返しの主張にもかかわらず、マニャールがゆえに記事が出ることはないだろう、という確信があってのことでした。
今朝のこのクロニックには憤慨させられます。愚かであり、滑稽です。私に「うぬぼれ」、考えや、願望を持たせてくれるようですが、全てグロテスクです。それにどうしてアレクシについては話さないのでしょう。彼も確かに私同様にうんざりしているというのに? 私一人が問題になっているように見えます。――馬鹿げている、馬鹿げています! だがどうすればいいでしょう。何をしても滑稽なだけです。
あなたがこうしたことの多くを相手にされないことはよく承知していますが、私には憂鬱で、そのことをお伝えしたかったのです。
敬意を込めて握手を、ゾラ夫人に私よりご挨拶を申し上げてください。
ギィ・ド・モーパッサン
Guy de Maupassant, Correspondance, éd. Jacques Suffel, Évreux, Le Cercle du bibliophile, 1973, t. II, p. 38-39.
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