モーパッサン 中短編小説
Contes et nouvelles de Maupassant
中短編 翻訳リスト
- 「剥製の手」 1875 (21/05/2006)
- 『エラクリユス・グロス博士』(1) (1-10章) 1875 (24/05/2007)
- 『エラクリユス・グロス博士』(2) (11-20章) 1875 (23/06/2007)
- 『エラクリユス・グロス博士』(3) (21-30章) 1875 (30/06/2007)
- 「水の上」 1881 (11/08/2006)
- 「あるパリのアヴァンチュール」 22/12/1881 (09/11/2014)
- 「親殺し」 25/09/1882 (29/09/2014)
- 「メヌエット」 20/11/1882 (22/02/2015)
- 「クリスマスの夜」 26/12/1882 (11/12/2014)
- 「ジュールおじさん」 07/08/1883 Nouveau ! (16/11/2024)
- 「首飾り」 17/02/1884 (15/09/2015)
- 「恐怖」(1884) 25/07/1884 (21/03/2019)
- 「オルラ」[初稿] 26/10/1886 (05/04/2006, 04/04/2022 改稿)
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解説 短編作家としてのモーパッサンに、解説の必要はないかもしれない。今日なお「脂肪の塊」、「メゾン・テリエ」をはじめとした多くの作品は、文庫の翻訳によって多くの人に読まれているのだから。
緊密な構成、簡潔にして活き活きとした人物表現、感覚に訴える風景描写、滑稽な、あるいは悲哀を催す数多くの物語。その多くに描かれるのは、ごく普通の市井の人間の姿である。どこにでもいそうな人物達、どこにでも見かけそうな風景。けれどそこにも確かに事件は起こり、ドラマは生まれる。何よりも「本当らしい」こと、まさしく人生とはこのようなものだと納得させてくれるもの、モーパッサンの文学には、そうした現実生活に根付いたリアリティーと説得力がある。
もちろん、そうしたモーパッサン文学の限界、狭量さを批判することもできる。実際、二十世紀前半のフランス作家達にとって、モーパッサンの評価は決して高くなかった。しかしその理由は、彼等が小説において、如何にレアリスムを超克するかを目指したが故であり、翻って考えれば、モーパッサン文学が、彼等にとって、まず何より真っ先に乗り越えるべき障壁としてあったことを示すだろう。つまり、モーパッサンは、十九世紀を通じて小説が目指してきた、レアリスム表現の一つの完成された姿を――ゾラと並んで、あるいはゾラ以上に端的に――示すものである。
二十一世紀に入った今日、フランスで、そして世界中でモーパッサンがなお広く読み継がれている事実こそは、彼の文学が、他の作家に比して、決して劣ったものではないということを示す、紛れもない証拠であろう。
まだ未読の人も、かつて読んだことのある人も、ぜひモーパッサンの優れた短編小説の世界を味わっていただきたいと願う。
既存の優れた翻訳と競争するつもりは更々ないので、ここでは、現在入手が難しい作品を中心に、ご紹介してゆくように努めたい。