モーパッサン 詩作品
Poèmes de Maupassant
詩作品 翻訳リスト
『詩集』 1880
- フロベールによる公開書簡
- 壁
- 日射病
- 恐怖
- 征服
- 雪の夜
- チュイルリー公園の愛の使い
- 水辺にて (03/09/2007)
- 野雁
- 発見
- 鳥刺し
- 祖父
- 欲望
- 最後の逃走 (20/01/2008)
- 十六歳の散歩
- 慎みのない請願
- 月光の歌
- 愛の終わり
- 通りの会話
- 田舎のヴィーナス (06/05/2014)
- (『昔がたり』) 「劇」の項目に掲載
その他の詩編
- 創造神 1868 (22/12/2017)
- ルイ・ブイエの死について 1869 (26/03/2022)
- エトルタの〈令嬢たちの部屋〉の伝説 1871
- 昨夜通りで見たもの 1872
- 「青春はもはやなく……」 1872
- 十六世紀 1872
- フォーヌの欲望 1874頃 (27/01/2018)
- ひげの女 1876 (27/01/2018)
- 我が泉 1877頃 (27/01/2018)
- 69 1877 (27/01/2018)
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解説 1870年代のモーパッサンはまず詩人をもって任じていた。
十八歳頃より本格的に詩作を始めたモーパッサンは、ルーアンの詩人ルイ・ブイエLouis Bouilhet の薫陶を受け、そしてフロベールの下での7年以上の修行期間中も、常に詩を書き続けてきた。評論「十六世紀のフランス詩人たち」(1877年1月17日『国家』紙)も、詩人としての自らの詩学の表明という要素の濃いものである。
ロマン派と離別し、当時絶頂のパルナス派とも傾向の異なる、新しいポエジーを生み出すこと。そのような命題のもと、モーパッサンの詩は、より密接に現実の世界へ足を踏み入れることを選ぶ。それは、現実の中に隠された詩情を見出し、同時に、現実そのものを「詩」の中に結晶化させようとする試みであった。何故なら、「詩的」なものが存在するのではなく、対象を捉える詩人の「目」が、そして彼の言葉こそが、事物を「詩」へ転換させるからである。
とりわけ長編詩においては、自然との交感、そしてその中における身体的恋愛が、率直な言葉で歌い上げられる。精神的、プラトニックな恋愛が、従来の詩において頻繁に歌われてきた中で、「欲望」を肯定し、そこに「詩情」を見出そうとした点に、モーパッサン詩の新しさがあった。確かに、その成果は一見、あまりに「散文的」であるように思われる。
だが、本能的次元で捉えられた、動物的といっていい人間像は、極端なまでに拡大・純粋化されて表現されることで、いつか現実の地平へ越え、ほとんど神話的様相を呈するに至る。そこに「田舎のヴィーナス」という、詩集中、最も長い作品が生まれた。そこに至って、モーパッサンの詩は確かにレアリスムを越えている。人間の身体・欲望を象徴の次元にまで高め、普遍的なものとして提示する。その点にこそ、モーパッサン詩学の核心があったように思われるのである。