モーパッサン 時評文

Chroniques de Maupassant



時評文 翻訳リスト

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モーパッサンのデッサン。ドーデ、フロベール、トゥルゲーネフ。 解説 モーパッサンが小説家として活躍したのはわずかに10年。その間に300を越す短中編が書かれたとはそれ自体驚きだが、更に彼は200を優に超す時評文を新聞・雑誌に発表している。
 この膨大の時評文の一部は、書き換えられ、3冊の旅行記の内に含められている。だがモーパッサンは生前、時評文だけを集めて作品集として出版することがなかったために、その多くは、作者の没後、長らく忘れられた存在であった。
 1950年代以降、幾人かの熱心な研究者が散逸したテクストを収集し、出版を行ってきた。Guy de Maupassant, Chroniques, édition complète et critique présntée par Gérard Delaisement, Paris, Rive Droite, 2003, 2 tomes は、その長年に亘る研究の集大成ともいうべきもので、ここに初めてモーパッサンの時評文はその全貌を一望することが出来るようになった。
 (Chroniques, préface d'Hubert Jean, Paris, U. G. E., 1980, 3 vols は、それまでの間、研究者が主に参照してきた版であるが、アルジェリア旅行記を含め、未収録の作品が多数存在する。)
 一般に「クロニック」と呼ばれる時評文の内容は多岐に渡る。簡単に分類するならば、政治批評、風俗批評、旅行記、そして文芸批評、に分けられるだろう。当代の政治・風俗を批判する作者の視線は鋭く、皮肉と諷刺に満ちている。
 コルシカ、アルジェリア、南仏、イタリアと、80年代のモーパッサンは頻繁に移動・旅行を繰り返すが、『太陽の下へ』、『水の上』、『放浪生活』の土台ともなる旅行記・見聞録もまた、その都度、同じ新聞紙上に発表された。
 モーパッサンは自らの文学について直接に語ることは極端に少なかったが、しかし一流の文芸批評家として、同時代の文学を対象に、批判・考察を繰り広げており、それを通して自らの文学観を確固たるものにしていった。また、親しい作家の肖像を描くことを好み、師フロベールに関する記事は全部で10を越える。

 ここでは文芸批評をメインに、今日まで日本に紹介されることの少なかった、ジャーナリスト・モーパッサンの側面をご紹介したい。

 なお、上に掲載のモーパッサンのデッサンは、左より、ドーデ、フロベール、トゥルゲーネフ。左下に座る小さな人物が、モーパッサン自身である。
 1876年3月11日付、友人ロベール・パンションに宛てた書簡の中のこのデッサンは、この時期、年長の大作家と交わりながら、自らの文学修行に励んでいたギィ青年の様子をユーモラスに語っている。三人の中でも、師であるフロベール、そしてトゥルゲーネフの存在はモーパッサンにとって重要であり、それぞれについて親しみを込めた記事を書き残している。




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