『ボヴァリー夫人』150周年!
Cent-cinquantenaire de Madame Bovary
今年、2007年は考えてみればフロベール『マダム・ボヴァリー』刊行150周年にあたるのだった。
だからどうした、という話ではあるが、こいういう記念年が大好きなのがフランス人であり、作家の生誕(あるいは死後)100周年の年にはその作家についての研究が集中し、研究書が出たり、コロックが開かれたり、美術展をやってみたり、芝居を上演してみたりする、というのが近年は慣例のようになっている。
モーパッサンに関して言えば1950年の生誕100周年の時にはまだそれほどの反響はなかったが、死後100周年の1993年にはあちこちで大規模なコロックが開かれた。この年前後数年の間に、モーパッサン研究は飛躍的に進展したといっていい。ついで2000年は生誕150周年にあたり、この年にも幾つかの催しがあった。
言い換えれば100周年はその作家が「聖別」されるかどうかの分かれの年でもある。最近ではゾラの死後100年( (2002年)、サンドの生誕200年(2004年)、サルトル生誕100周年(2005年)など、フランスに限らず日本においても活発な活動が見られた。
2007年は誰の年だかは今ちょっと詳らかにしないけれど、とにかく『ボヴァリー夫人』150周年なのである。かなり地味な話ではあるけれど、まあお付き合い願いたい。
さてフロベールに縁の深いルーアンには「フロベール・モーパッサン友の会」(Amis de Flaubert et de Maupassant)があり、ここは年に数回コロックや旅行を企画しているのだけれど、こういうところがこの150周年を見逃すはずはないのである。
写真は本年のプログラムの表紙だが、これを見ると来る11月15-17日には国際コロック「『マダム・ボヴァリー』、150年とこれから・・・総括と概観」が行われることになっている。
さらにすごいのは、それに先立つ9月15(土)16(日)日に開かれる「『マダム・ボヴァリー』読書マラソン」の企画だ。これは何かというと、なんと丸二日かけてみんなで『ボヴァリー夫人』を最初から最後まで読み切ろうという催しなのである。
プログラムによれば一日目は午後2時スタート、一章ごとに交代しながら、真夜中12時までかけて第二部までを読み切る。そして二日目は、午前10時開始で夕方4時半頃にめでたく第三部を走破する予定になっている。
ずいぶんと御苦労さんな企画のように思えるけれど、こういう話が実現してしまうのはさすがフランス。この国には今なお「朗読」の伝統が息づいているのだ。今日でも作家(詩人に限らず小説家も)が自作の朗読会を開くことは多いし、テレビなどでも放映されもする。もちろんフランスだけではなく広く欧米に見られる文化だろうけれど、日本ではあまり行われないことだけに興味深い。
とりわけフロベールは文体に苦心したことで有名な作家だ。彼は常に自分の原稿を音読し、耳で言葉の響き確かめていたという。推敲に推敲を重ねて練り上げられた彼の文章は、今日の感性からすればいささか大仰な印象は確かにあるけれど、それでもやっぱり惚れ惚れするぐらいに美しい。「読書マラソン」はそんな彼(の文章)に捧げる格別のオマージュとなることだろう。
(30/03/2007)