モーパッサン
『バラの葉陰、トルコ館』

À la feulle de rose, maison turque, 1875



(*お断り 本作品には今日の観点からは差別的といえる表現が認められますが、19世紀フランスの社会状況に基づいたものであることに鑑み、なるべく原文に忠実な翻訳としています。差別の助長を意図するものではないということをご理解ください。翻訳者 足立 和彦)

『バラの葉陰、トルコ館』挿絵 解説 1875年、ボート仲間たちと共同で作られた一幕散文喜劇。
 1875年4月19日に、画家モーリス・ルロワールのアトリエにおいて上演された。1877年5月17日にも、画家ベッケールのアトリエで再演されている。
 売春宿「バラの葉陰、トルコ館」を舞台に、地方のブルジョア、ボーフランケ夫妻の浮気の物語と、滑稽な客と娼婦とのやり取りを織り交ぜた、猥雑なスラップスティック・コメディー。本作についてのより詳しい解説は「『バラの葉陰、トルコ館』について」をご覧頂きたい。


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バラの葉陰、トルコ館
散文による一幕の(悪しき)風俗劇

登場人物

ミシェ(1) 売春宿の主人
クレット・ド・コック(2) 同宿のボーイ
ボーフランケ コンヴィル村長
レオン
屎尿汲み取り人
せむし
退役大尉
青年
工兵
マルセイユ男
イギリス人

ラファエル 売笑婦
ファトマ 売笑婦
ブロンディネット 売笑婦
ボーフランケ夫人

舞台は今日のパリ、ある売春宿の客間。
客間にはオリエントの壁掛け、奥に三つの扉、左右にソファー。

第一場
ミシェ、クレット・ド・コック

ミシェ おい! クレット・ド・コック、すべて準備はいいか?
クレット・ド・コック はい、旦那様。
ミシェ さあ、急ごう、急ごう。しみったれた客も逃しちゃいけない。もう、商売は上々とはいえない有様だからな。
クレット・ド・コック 旦那様、新しい広告が届いたところですよ。
(小包を手渡す。)
ミシェ ああ! いいねえ、こっそり配達するようにしなきゃいけないぜ。
クレット・ド・コック お任せください、旦那様。
ミシェ いいかい(読む)「バラの葉陰、トルコ館、客間と家具付きの小部屋」
クレット・ド・コック しっかり付いてますとも。
ミシェ(読む)「選ばれた顧客、安全、細心の配慮、慎重。当家はトルコ様式にて新装開店、ハイ・ライフのために特にお勧めです。あらゆる言葉を使用可能」
クレット・ド・コック 悪くないですね。大したアイデアですよ、旦那様。
ミシェ 俺は女たちにトルコ風の服を着せたってわけさ!
クレット・ド・コック トルコ風の家(3)なんて、毎日見られるもんじゃありません。それにブルジョアときたら、トルコ人に目がないですからね。
ミシェ そうじゃなかったら、まったく、俺はどうやって切り抜けたらいいか分かりゃしないね。
クレット・ド・コック ここには女が三人しかいませんからね。
ミシェ 一人には歯がない。
クレット・ド・コック もう一人は蠅は殺すし、客は転ばせる。
ミシェ もう人前に出せるのはラファエルしかいねえな。
クレット・ド・コック(ため息をついて) ああ! ラファエル、彼女も一週間留置所にいたんですぜ。
ミシェ それでおしまいか?
クレット・ド・コック 自分の惚れた女が……のを見るのが愉快なことだとお思いなんでしたら……。
ミシェ そんなのは馬鹿げたことだね。お前は俺の後釜に座りたいんじゃねえのか? まったく、おセンチで身を危うくするようなことはしちゃいけないね。さあ、上で女どもが着替えたか見てくるとしよう。
(退出する。)


第二場
クレット・ド・コック

クレット・ド・コック(一人) ああ! ラファエル!(ソファーにブラシをかける。)ああ、もう、また見落としてた染みがある。(洗面器をソファーに置いて染みをこする。)ああ! 売女ども! まったく、もっと注意できそうなもんじゃないか。一人コンドームを使ってない女がいるぞ。そういや、今晩の分は十分だったかな?(戸棚を開け、一掴みのコンドームを取り出す。)三時か。(ゆっくりと数える)一、二、三。(血で一杯のものを見つける。)ああ! これを洗うなんて御免だね、六……、七……、十八……、こいつは穴が空いてる。
(それを調べて、空気を入れて膨らます。)
 ああ、なんてこった!…… もしこれがブロンディネットに使われたんなら、また一人病気持ちだな。
(別のものを膨らます。)
 ああ! こいつはまた使えるな。もっとも今度が最後だろうけどな。さあ、掃除しろ、洗え、磨け、こすれ、石鹸つけて。五年前、俺が神学校にいた頃に、誰がそんなこと言ったろうね。ああ! 哀れな被造物だ、俺をどうしようってんだ! 天の神様はなんであんな呪われた洗濯女に俺を会わせたんだ? あの頃、あいつは俺の祭服にアイロンをかけてたんだが、あいつのお陰で今じゃ俺がコンドームにアイロンかけてる始末じゃないか。ひどい仕事だよ、まったく! ああ! 女どもよ、お前らは俺たちをどんだけ深い穴に落とすんだ!……。あいつの染みを抜くなんて絶対に出来ないね。あいつが俺よりも下衆なのは本当だよ。ああ! ラファエル、あいつはこんな中に暮らしていながら、後悔もしなきゃ、過去を惜しみもしねえ。なのに俺は今でもあいつが好きだってんだ……。おっと一個忘れてた。今日は俺にお楽しみがあるんだからな。哀れなクレット・ド・コック! 女どもは俺にクレット・ド・コック(尖圭コンジローム)なんて名をつけやがった、売女どもが。クレット・ド・コックとはね、今頃はアベ・ルコック(ルコック神父)と呼ばれてたはずなのに! ああ! 女ども、女ども!


第三場
クレット・ド・コック、屎尿汲み取り人

クレット・ド・コック(屎尿汲み取り人に) どんな御用で?
屎尿汲み取り人 あっしはうんこを、その、便所を空にしにきたんで。あっしは、くみ、くみ、くみ
クレット・ド・コック どちらの組衆(4)
屎尿汲み取り人 汲み取り屋でござい。
クレット・ド・コック 今はその時間じゃないよ。
屎尿汲み取り人 いつ、いつもこの時、この時間に空けるんで。
クレット・ド・コック ここは違うよ。夜に働いてるからね。
屎尿汲み取り人 しご、しご、仕事が終わるのを待ってますよ。
クレット・ド・コック 行っちまいな。ありえない話だね。さあ、出て行きな、あんたはウンざりさせるよ。
屎尿汲み取り人(怒って) いいや、旦那、あっしはウンざりさせやしねえ。はん、はん、反対に、ウンコを取りに来たんでさあ!(5) ウンコを取りに!
クレット・ド・コック あとで分かるさ。あんた、また後でおいで。行っちまいな。
(汲み取り人、退場。)


第四場
クレット・ド・コック、ミシェ、ボーフランケ夫妻

ミシェ(仰々しく挨拶しながら) よろしゅうございます、旦那様。で、どちら様でございましょうか?
ボーフランケ氏 ボーフランケ氏、コンヴィル村長(6)と、ボーフランケ夫人、私の妻だ。
ミシェ あなた様が、レオン様のお勧めでいらっしゃったんですね。当館にご宿泊になって後悔することは何もないと保証いたしますよ。
ボーフランケ氏 我々は良いホテルに宿泊することを望んでおる。ベッド二つに洗面所のついた良い部屋を頼むよ。
ミシェ かしこまりました、旦那様。ご心配なく。
ボーフランケ氏 ここは静かなようだね?
ミシェ 大変静かでございます。安心してお休みになれますよ。
ボーフランケ夫人 ああ! あなた、こちらへ案内してくれて、レオンはとてもご親切な方だと思うわ。
ミシェ(クレット・ド・コックに) 奥様と旦那様を黄色の部屋にご案内しなさい。


第五場
ミシェ、屎尿汲み取り人

ミシェ 何の御用で?
屎尿汲み取り人 あっしは、クレ、クレ、クレを……。
ミシェ 誰? クレオパトラ? 彼女ならサン=ラザール(7)だよ。
屎尿汲み取り人 違いますよ、ウンコの、べ、便所のクレ(鍵)でさあ。
ミシェ そりゃ、あんた、午前四時に来てくださいよ。今ここでは、あれを空けられやしないよ。
屎尿汲み取り人 だってその時間にゃあ、あっしはしご、しご、仕事をしてねえだ(8)
ミシェ まあ、またにしたまえ、さあさあ……。
屎尿汲み取り人 た、他人をそんな風に追い払うなんて、そりゃ、あ、あ、憐れみがねえこった(9)
(ミシェは追い出し、汲み取り人は退場。)


第六場
ミシェ、クレット・ド・コック

ミシェ(手の匂いを嗅いで) うへえ! うへえ! あんな仕事をするのには、あんまり気難しくない人間が必要だろうね。
クレット・ド・コック(入ってきて) ありゃ一体何なんです? あっしが案内したお方らはどなたで?
ミシェ あれはレオンが俺に送って寄越したブルジョアで、彼はあのブルジョア夫人とやりたいんだとさ。
クレット・ド・コック まったく寝とられ亭主って面してますよ、あの旦那。でもどんな風になさるおつもりで? ポリ公に注意しなきゃ駄目ですぜ。
ミシェ 気にするこたあないね。亭主と愛人に金を出させりゃ、あとは知ったことじゃない。まったく、こいつはいい商売だぜ。
(彼は嬉しそうに手をこすり合わせる。)
クレット・ド・コック なんて運がいいお方でしょうね! この方はここじゃあ水の中の魚のようでさあ。
ミシェ なに魚の話なんかしてるんだ?(10) 冗談は困るね。よろしく頼むよ、クレット・ド・コック君。
クレット・ド・コック 私は、旦那様、何にも。(傍白)首吊り人の家でヒモの話はなしってね。


第七場
ミシェ、クレット・ド・コック、レオン

レオン やあ、ミシェ。
ミシェ レオンさん(11)、何なりとお申し付けを。
レオン 僕が送った旦那とご婦人を迎えたはずだね。亭主を丸めこむ手はずをよろしく頼むよ。
ミシェ ああ! ああ! 成行きをみさせてもらいますよ。あなたは相変わらず抜け目ない方だ。結構なことで。悪くありませんな……、あのブルジョア女性は。
レオン 何が言いたいんだ? 彼女をここに送りこむのが驚きだってのは認めるさ。だがどうしても彼女と寝たいんで、他には方法がなかったんだ……。あんたの親切はきっと報われるよ。
ミシェ おお! お任せください! 出来ることはなんでもしますよ。この建物があなた様には十分でないのをお詫びしますけども。
レオン あんたの女たちは可愛らしいが、だが社交界の女ときたらね! 分かるだろう、そりゃあ別物さ。その女が身を差し出し、体を任せ、すっかり自分のものになる。あれこそ僕が物にしたい女だね。
ミシェ やれやれ! あなた様には上物が必要なんですな。あなたならブルジョア女が何人でもお手の物でしょう。要するに、何でもお申し付けください。
レオン もしうまくいったら、ねえ、ギブ・アンド・テイクってもんさ……。それじゃあシャンパンを一本とコールド・チキンを頼むよ。すっかり腹が減ってるんでね。
ミシェ お安いご用で。
(レオンとクレット・ド・コック退場。)


第八場
ミシェ、せむし

ミシェ 当方の女性を誰かご存知で?
せむし いいや。ぜひともお近づきになりたいものですな。
ミシェ では女性たちに降りてこさせましょう。
(退出する。)


第九場
せむし

せむし(独白) 売春宿、まずもって、それしか本当のものはないね。社交界の女ってのを俺も味見してみたが、もう御免だね。一人と関係を持つや、もう追い払うことはできないし、あの乙にすました女たちと一緒だと、山ほどの作法が要るし、身なりに金がかかる。俺は、黒の燕尾服なんか着たくない。おまけに、ああした女たちの評判を傷つけないように十分に注意しないといけない上に、その女がいばりくさったりする日の来る始末だ。それに比べりゃ、ここでは女たちはいつでも愛想がいいからな。
(女たちが登場。)


第十場
せむし、ラファエル、ブロンディネット、ファトマ

女たち こんにちは、旦那さん。
せむし 奥様がた、心を込めて挨拶申し上げますよ。
ラファエル 選んでくださいな。旦那さん。私たちはとっても愛らしくて、とっても淫らで、とってもいやらしいのよ。
せむし そうだろうとも、奥様がた、そうだろうともね。一目見りゃあ、そうと分かりますよ。
ラファエル この小人さんったら、可愛いのね! なんて親切なの! さあ、決めてくださいな。私たちから一人を選んでね。
せむし 選ぶとなると大いに困ってしまいますな。
ラファエル 私があなただったら、困りはしないわ。
せむし どうして?
ラファエル 私ならラファエルを選ぶでしょうから。
せむし ああ! そりゃいい……、そりゃいい……。
ラファエル お選びになる間に、何かお取りになっては?
せむし こりゃどうも。喉は渇いてませんな。食事の時の他は、決して飲み物をとりませんでな。
ファトマ このキューピッドさんたらお優しいのね。さあ、お選びなさいな、私のアポロンさん。
せむし ああ! あんたは恥ずかしがらせるね。
ファトマ あんたはシャルトルの出身でしょうね。
せむし どうしてまた?
ファトマ だって、あなたはボース地方の出でしょ(12)
せむし(気分を害して)そういうあんたは、アスニエール出身に違いないね。
ファトマ なんでさ?
せむし きっと、大排水溝の死んだネズミを飲み込んだんだろうからさ(13)
ファトマ やめなさいよ、嫌な人!
ラファエル さあ、おいでなさいな、私の赤ちゃん。
せむし あんたは私の好みだよ、いい娘さんのようだし、あんたには胸もある。
ラファエル それに、私には特別な才能もあるのよ。
せむし そりゃあいいね。私は勝負の全部が好きなんでね。
ラファエル いらっしゃいな、お好きなように入れていいのよ。
せむし さあ、さあ、君は私を堕落させるね。
クレット・ド・コック(登場し、打ちのめされる) いつでもラファエルさ!
(せむしに)
安全器具は御入り用で?
せむし そうだね、それは無駄じゃないね。
(コンドームを調べる。)
クレット・ド・コック お支払い頂けますか?(せむしは払う。)ボーイのことをお忘れになりませんように。
せむし 安心しなさい、あんたの顔は忘れられんよ。
(ラファエルと共に退場。クレット・ド・コックは絶望の身ぶり。)


第十一場
ミシェ、クレット・ド・コック、ファトマ、
ブロンディネット、次いでボーフランケ夫人

クレット・ド・コック(ミシェの手に金を渡しながら) ラファエル夫人のショートタイムです。
ボーフランケ夫人(入ってくる) レオンさんの声が聞こえたような気がしたのだけれど。
ミシェ ええ、奥様。お着きになったところでして、お会いになればお喜びでしょう。
ボーフランケ夫人 夫は、私が着物を出している間に横になって、寝てしまいましたの。あの人が従弟と会えるように、起こして参りますわ。
ミシェ 構いませんよ、私が参りましょう。
ボーフランケ夫人(ファトマとブロンディネットを見て) ああ! この方たち、なんて変わった衣装なんでしょう!
ミシェ(耳をこすって、傍白)ああ、畜生! (大声で)ええ、奥様、ご説明いたしましょう。こちらのご婦人がたはトルコ大使館の方々です。大使閣下が、閣下のハーレムの護衛を私めに任されたのでございます。
ボーフランケ夫人 ああ! トルコのご婦人がた、じゃあ彼女たちはお話しになるのね。
ミシェ 彼女たちはどんな言葉も使います。(傍白)ふーむ! (大声で)ああ! 失礼しました。彼女たちは私やあなた様同様にフランス語を話します。
クレット・ド・コック(登場して) ミシェさん、せむしがラファエル嬢と喧嘩してます。
ミシェ ああ! この野郎、待っていろよ。
(腕を叩いて退場。)


第十二場
同前、ミシェを除く

ラファエル(入ってきて、傍白) あん畜生、ズボンの中に出しちまったからって、おあしを寄越しゃしないんだからね。
(自分の金を靴下に入れる。彼女はボーフランケ夫人に気づく。)
あら、新顔ね。(ボーフランケ夫人が挨拶する。)堅苦しいのはなしにしなよ!
ボーフランケ夫人 奥様がた、私はハーレムの内側についての話をたくさん聞いたことはありますけど、訪れてみる機会はなかったんでございます。
ラファエル ああ! それじゃ初めて家に入ったのね。
ボーフランケ夫人 トルコ風の、ですわね……。 そうなんですの、奥様。
ラファエル それでも、社交界の人たちに会ったことが何度もあるんでしょう。
ボーフランケ夫人 ああ! ええ、奥様。
ラファエル あらゆる位置をお取りになって?
ボーフランケ夫人 いいえ、ボーフランケ氏は決して配置換えになったことはありませんわ。
ラファエル ボーフランケって誰だい? そんなポン引きは知らないねえ。
ボーフランケ夫人 ポンビキ。きっとトルコの称号ね。
ラファエル よくバラの葉(14)をなさいますこと?
ボーフランケ夫人 バラの葉!(傍白)ああ、そう、トルコのジャムのことね。(大きく)まだ食べたことがありませんわ。
(女たちが笑いだす。)
ファトマ バラの葉を知らないって! じゃあ彼女は何をするわけ?
ラファエル じゃあ、塩辛(15)は?
ボーフランケ夫人 ああ! それは、はい。
ラファエル グレーハウンド(16)はご存知?
ボーフランケ夫人 はい。
ラファエル 御者(17)、わんぱく坊主(18)、六十九(19)、怠け女(20)、手押し車(21)は?
ボーフランケ夫人(驚いて) ええ、それらは存じております。(傍白)トルコの女って、なんて変な質問をするんでしょう! オダリスクは無知だって言ってたわねえ。
ラファエル このお嬢さん、気に入ったわ。あなた、ネコをぱくつく(22)のはお好き?
ボーフランケ夫人 ええ! ネコは大好きですわ。
ラファエル ああ! それじゃあ、私たちは同じ趣味を持ってるんだから、私のを差し上げますわ。
ボーフランケ夫人 願ってもないことですわ。ない時には、大層さみしいものですもの。
ラファエル(彼女を愛撫しながら) 私たち、すっかり分かりあえてるわね、かわい子ちゃん。
ミシェ(クレット・ド・コックとともに登場) 奥様、レオン様がお待ちです。
ボーフランケ夫人 でも夫が!
ミシェ ご心配いりません。ご主人にはお知らせ済みです。
(ボーフランケ夫人とクレット・ド・コック退場。)


第十三場
ラファエル、ミシェ、ファトマ

ミシェ さあ、お前たち、今日はあんたらに知らせることがある。俺は戦をしかけ、古参親衛隊に攻撃させよう。
ファトマ ああ! あんたは親切だこと。
ミシェ 気にするな。これは歴史的な言い回しなんだよ。さあ、聞いてくれ。この宿に俺が一時間か二時間捕えておくように命じられた奴がいる。もしこいつがここにその汚ねえ面を見せやがったら、きちんと取り扱ってさしあげてくれ。外に出しちゃいけない。全員がたんまり稼げるんだし、もし変なことをしやがったら、そんときは引き受けるさ。
ラファエル おとなしくしなさいな。
クレット・ド・コック(入ってきて) みんないるな。大尉さんでさ。


第十四場
同前、大尉

ミシェ さあ、場所につきな、お前さんたち。ちょっとした絵画ってもんだ、ほら、うまくいった。
大尉 けっこう! お前さんがた、それで職務のほうは? いつでもしっかり持ち場についておるかな?
ラファエル いつもです。将軍。
大尉(剣術の身ぶり) 襲撃の準備もできておるか?
ラファエル(身ぶりを真似て) もちろんです、将軍。あなたからお先に。
大尉 わしは何もせんよ。
ラファエル 仰せの通りに。
大尉 前へ。(女たちは彼を取り囲んで撫でまわす)さあさあ、やめなさい。わしはそういう態度は好かんのだよ。わしは掻き立ててもらう必要はないのだ。青二才やひ弱者どもとは違うんじゃ。
ファトマ さあ、将軍、お選びになって。
大尉 それじゃあ、列になって。(声を上げる。)気をつけ、小隊。
ラファエル ショータイムです(23)、将軍。
大尉 この娘はいつでも機知に富んでおる。隊列、右に、止まれ。小隊、右向け右。最初の者、尻よし。小隊、右向け右。一番、三歩前へ、歩け。
ラファエル(三歩前進) お選びくださりありがとうございます。将軍。
クレット・ド・コック(傍白) またラファエル!(大尉に)合い言葉を、将軍。(大尉は払う。)あなたのサーベルに鞘は御入り用ですかな?
大尉(クレット・ド・コックの差し出すコンドームを断り) 断じて。そんなものをこのわしが使用するものか! 突撃する時にサーベルを鞘に入れておくかね?
クレット・ド・コック(傍白) 発射ですもんね(24)


第十五場
ファトマ、ブロンディネット、クレット・ド・コック、ミシェ

クレット・ド・コック ラファエル夫人にショートタイム。
ミシェ よく働くよ、ラファエルは。
ファトマ 運がいいこったね、あの女はさ!
ブロンディネット 運は彼女のためにしか存在しないのさ。
ファトマ そうはいっても、同じくらいよく働いたって自慢してもいいさ。
クレット・ド・コック あんたたちの中に彼女をしのぐのがいるのかい?
ファトマ あの雌牛が選ばれるのは目方のおかげでしょうよ。市場にお目見えしたほうがいいんだわ。
クレット・ド・コック 黙れ、あんたの鎖骨のくぼみとピンセットみたいな脚じゃあ、あんたに抱かれた客は、棒で殴られたみたいに思うのさ。
ミシェ さあさあ、もう終わりか? お前たちしかいなかったら、さぞ大変なことだろうよ。ここの商売をなんとかしてくれてるのは彼女だけだね。
クレット・ド・コック 旦那様は功績を正当に評価していらっしゃる。
ファトマ ふんだ! うすのろが。
クレット・ド・コック あんたに彼女ほどの才能がありゃあ、話し方も分かろうってものさ。
ファトマ 才能だって? まるであたしに説教をたれようってみたいだね。
クレット・ド・コック あんたに年相応の経験があるのはよく知ってるよ。きっとメトシェラ(25)と寝たことがあるんだろうね。
ミシェ さあ、黙りたまえ。騒ぎはおしまいだな?
ファトマ あいつがののしったんだよ、あの灌水器の水切り男(26)がね。
ミシェ(ファトマに) 黙らないか。
クレット・ド・コック どうしてこの薄汚いあばずれはラファエルのことを悪く言うんだ?
ミシェ(クレット・ド・コックに) もう終わりにするか?
ファトマ あんたの嫌らしい売女の話をするには、気をつけて物を言わなきゃいけないのかい?
クレット・ド・コック(怒って) もう一度言ってみろ、顔に一発お見舞いしてやるぞ。
ファトマ あんたがかい?
クレット・ド・コック そうさ、俺がさ。
ミシェ(二人を離して) ほらほら、ごろつきども、けりをつけようじゃないか。
クレット・ド・コック 旦那様の言う通りだ。怒りは悪しき助言者で、理性を失わせるんだ。結局のところ間違っていたのは俺なんだし、謙虚に過ちを告白しよう。だってここでは、俺が良い例を示さなきゃならないからな。ファトマ、握手してくれるか? 無礼を許すことを学び、自分がしてほしくないことは他人にはしてはいけないということを忘れないようにしよう。隣人を悪く言う代わりに、努力して……。
ファトマ(笑って) おやおや! ほーら、神父様がお説教だよ。糞ったれ。
ミシェ 気をつけな! 誰か来るぞ。


第十六場
同前、ラファエル、次いで、マルセイユ男

ラファエル(戻ってきて) ちょうど良かった! あんなのが私の好きな男さ。さっさと済ましてくれるからね。
マルセイユ男(入ってきて) こんにちは、美しい皆さん。
女たち いらっしゃい……。とっても愛らしくて、とっても淫らで、とってもいやらしいわよ。
マルセイユ男(27) ああ! まったく、あては知ってまんで、あんさんらがそのためにここにおるのは。あんたらがいやらしくなかったら最低でんがな。そやなかったら、誰もあんさんらに会いに来はしませんやろな、ほんまに。
(女たちが彼を取り囲む。)
ラファエル 選んでよ、愛しい人。
マルセイユ男 分かってまんがな。せやかてどないして選んだらよろしいかな、あんさんがたみんなたいへんに別嬪やさかい。あてはまったく、とっても困ってまうで、あんさんがたとても魅力的やさかい。
ラファエル あたしがあなただったら、困ったりしないでしょうけど。
マルセイユ男 なんででっか?
ラファエル ラファエルを選ぶからよ。
マルセイユ男 ラファエル、それがお前さんやな、賭けてもええわ。お尻を見せてもらえるやろか。
ラファエル いらっしゃいな。
マルセイユ男 こんなんでどないせえ言うんや? そないなもん、あての小指さえ突っ込めやしませんがな。いやはやマルセイユは良かったがな! あんさんがたカヌビエール通りを知りまへんやろ。あそこには別嬪なおなごがいますねん。あの子らはあての帽子みたいな大きなあれを持ってます。いやはや! そんで幸いにもその中へ突っ込めるんでんがな。
ミシェ やれやれ、冗談がお好きだ。カヌビエール通りなら知ってますよ。まるでマルセイユ男のちんぽは他のよりもすごいみたいですな。
マルセイユ男 マルセイユ男のちんぽ言うたらな、あんた! そら船の舳先におっ立つ帆柱みたいでっせ。それに金玉! まったく、股の間にあんなのをお持ちやったら、可愛そうとは思いまへんな、まったく!
ミシェ 同感ですな。
マルセイユ男 それを受け入れる立派なお尻をお持ちですさかいに尚更でんな! マルセイユ男のちんぽ、ええか、あてが言うてまんねんで、あてのがおっ立ったら、そらえらいことやで、しかもあてはいつでも立ってまんねん。一度なんか、あんた、あてはある女と寝ましてんけど、かわいそうな女でした、あては一度突き、二度突き、三度突き、また突いて、十八度目に、放出せんと終わった時には、彼女が死んでるのに気づきましてん。あてのちんぽが腹を突き破ってしもたんや。死亡を確認した医者は、あてのちんぽが胸まで届いて、それで息が詰まってしもたんやと認めましたわ。
ファトマ 結構なこと、あたしがあんたとやるなんてことを当てにしないでほしいわね。
ミシェ(ほらを吹いて) それじゃあ、この俺、おいらときたらだね、ある日、火事があって、燃えている建物の五階まで上ったのさ。助けなきゃならんのは四人。俺は旦那を背負い、右手に父親、左手に母親を抱えた。残ったのは奥さんだ。どうすりゃいい? 俺は自分のちんぽに馬乗りにさせたよ。そして階段を降りながら、休むことなく、一階で一度ずつ、四度やったってわけよ。
クレット・ド・コック おや、旦那様、やつがオベリスクのようにおっ立ってますぜ。
マルセイユ男 オベリスク! 彼に褒美をあげまひょか、まったく! 一度なんかは、あては結婚せなあきまへんでした。
ラファエル まあ! あなた既婚者なの。
マルセイユ男 おお! あては幸いにもやもめになりましてん。あてが言い寄っている間ずっと、婚約者はあんまりにもあてを刺激しましたんで、晩に部屋に帰って来て、尿瓶に小便をしたいと思っても、ちんぽが上を向いたまんまででけまへんのや。天上を濡らしてしまうとこやったけど、えらいこっちゃ。あんさんがたやったら、どないしたでしょうな?
クレット・ド・コック 知らないね。
ミシェ 窓からしたでしょうな。
マルセイユ男 そないなことしたらお隣さんが大変や! あては、ちんぽを暖炉に突っ込んで、屋根の上にぶちまけたんでっせ!
ミシェ ほほう! それじゃあなたに、これまで見たことのないのをお見せしましょう。俺の爺様のちんぽを剥製にしたものさ。これが爺さんの遺した唯一の形見さ。俺の家系ではどんな風な物がついてるかお分かりになりますぜ。(クレット・ド・コックに)さあ、ブツを出してくれ。
(クレット・ド・コックは奥のカーテンを開ける。
壁にかけられたダンボール紙で出来た巨大なペニスが見える。)
マルセイユ男 ああ! こんなのはほんまに見たことがおまへん。これがおっ立った時にはさぞ綺麗やろうな。
(ペニスに敬礼する。)
ミシェ ご婦人がた、あなた方の魅力でもって、原初の活力を取り戻させてくれたまえ。
(女たちは孔雀の羽を持って通ってゆき、男根の周りで踊る。
クレット・ド・コックは機械仕掛けで勃起させる。)
マルセイユ男 ああ! もう我慢でけへん! 娘っ子、おいで!
クレット・ド・コック ラファエル! 無理だ、彼女が殺されてしまう。
ラファエル 馬鹿ね、もっと他のだって見たことあるわよ。
(ミシェ退場。クレット・ド・コックと女たちも続こうとする。)
マルセイユ男 ああ! あては全員相手にしまっせ。(クレット・ド・コックに、男根を示して)あんさんは残って、爺さまのあれを行かせてや。売女たちは、向こうで素敵な光景でも見せてんか。
(ラファエルとやろうとする。)
クレット・ド・コック(クランクを回して) ああ!不幸、なんという苦しみ! 鐘を鳴らしていた頃を思い出すよ。ああ! ラファエル! なんという苦しみ! 彼女はすっかり元気で! それでも俺とは、やりたいと思ってくれないんだ。
(マルセイユ男はやりながらおならする。)
ラファエル このマルセイユ男ったら! いつでもふざけてるんだから。
マルセイユ男 ああ! みんなが笑わせるけんど、あては気持ちよくおまへん。
ラファエル ほらほら!
マルセイユ男 ああ! あかん、あては気持ちよくなれへん。なんでこないなんか理解でけへん。こんな目にあったんは初めてや。
ラファエル そんなにふざけなくてもいいじゃない。
(彼女は身を起こす。)
マルセイユ男 ああ! あんさん、できることはするけんど、あれまあ……。
(自分のペニスを見る。)
ラファエル それ普通じゃないわ。何なの、この豚野郎? あんた梅毒持ちね。
マルセイユ男 とんでもおまへん! なんでもあらへん、生まれつきでんがな。
クレット・ド・コック(恐怖に駆られ、洗面器を持ってくる) さあさあ、早く洗って。
マルセイユ男 ご婦人がた、ご機嫌よろしゅう。
女たち あたしたちのお代、あたしたちのお代。
マルセイユ男 いやはや! あんさんらはひどい売女や。うんざりさせられて、何もしてないのに金を払わせよってさかいに! (観客に)こないな目にあったんは初めてやねんで。
(逃げ出す。)
ラファエル ふん! ふにゃちん野郎は行っちまいな! カヌビエール通りのすかたん。


第十七場
ミシェ、ボーフランケ氏

ボーフランケ氏 ボーフランケ夫人に会いませんでしたかな?
ミシェ 失礼ですが、旦那様、奥方はつい先ほどまでここにいらっしゃいました。今はこちらのご婦人がたの特別のお部屋にいらっしゃいます。トルコ大使閣下のご許可を得て、私が奥様のために見学のお許しを頂きましたので。
ボーフランケ氏(女たちに目をとめて) ああ! こちらのご婦人がた!
ミシェ 閣下のハーレムでございます!
ボーフランケ氏 ほほう!
ミシェ 申し上げておきますと、大使館のアパルトマンはまだ整っていないのです。閣下は、ハーレムの監督を私にお任せになったのです。
ボーフランケ氏 奥様がた、私はすっかり恐縮しております。こんな早い時間に光栄にもあなたがたにお会いできるとは思ってもおりませんでしたもので。私の身なりの無礼をお許しくださいますように。
(彼は部屋着を着ている。)
ミシェ まったく無礼ではありません。閣下はそれ以上にお召しになることはありませんし、しばしばそれ以下ですから。
ボーフランケ氏(しなを作って) それには、閣下がお持ちの特権が必要でしょうな。それ以上を望むことなどありませんけれどもね。
ラファエル(笑って) お望みなさいな、坊や。
ボーフランケ氏(驚いて) なんと?
ミシェ 驚くにはおよびませんよ。このご婦人がたは実際のところ閣下以外の男性に会ったことがないので、ある程度自由な言葉に慣れているのでして、このような場合には不都合はないのです。
ボーフランケ氏 なるほど(恐怖を感じて)しかし、ハーレムに入った者の首は容赦なく斬られるとかいう話でしたよ。ねえ、私がこんなことをしたのはまったくうっかりしていたからなんです。
(退出しようとする。)
ミシェ ええ、そうですとも、トルコではそうです。でもフランスでは、それほど残酷じゃありません。そもそも、このご婦人がたは完全に私の監督に任されていますから、責任は私にのみ関係することです。それに、こうしたことが起こったのは今回が初めてですが、あなたは高潔でいらっしゃるから、私もそれほど厳しくしなくて済むでしょう。
ボーフランケ氏 でも、あなたが話したら、どうなるんです?
ミシェ あなたはトルコ当局の復讐にゆだねられるでしょうな。
ボーフランケ氏 それで、トルコ当局は何をするんです?
ミシェ 首を斬るでしょうね。
ボーフランケ氏(傍白) ああ! なんてこった。
(ミシェの手に二ルイ(28)を握らせる。ミシェは深々とお辞儀する。)
ミシェ 旦那様、もしこのご婦人がたと特別にお話しされることをお望みでしたら、一時ばかり、お時間をさしあげますが。私は目も耳もふさいでいましょう。
ボーフランケ氏 それはたいへん親切ですな。ハーレムの生活の細部を知ることができたら本当に嬉しいですな。(傍白)この衣装はまさしくトルコ風だな。こんなのはフランスでは見つけられないだろう。
ミシェ もし冷たい飲み物でもご所望でしたら、ベルをお鳴らしください。私は下がっていますので。
ボーフランケ氏 このご婦人がたは普段何を飲むのかな? きっと花の蜜のシロップでしょうな。
ミシェ まさしく。(クレット・ド・コックに)ビール三杯とブランデー一杯、ラファエル用だ。
クレット・ド・コック そらきた、ブーン!
(ミシェと共に退出する。)


第十八場
女たち、ボーフランケ氏

ボーフランケ氏 奥様がた、皆様の前にひれ伏しますのは、かつてなく熱心で恭しい従者であるとお信じくださいますように。
ラファエル あんた、いい人だね。でもなんだか馬鹿みたいだね。さあ、ここにお座りなさいな。何をしてほしいの?
ボーフランケ氏(ラファエルとファトマの間に座って) 塔があって、ミナレットがあって、ハーレムがあって、処女林があって、トルコは美しい国ですな。
ラファエル なんだって! 処女なんてものはここにはいないよ、あんた。
ボーフランケ氏(しなを作って) 大使閣下はしっかりと森を開墾なさったのですな。大使というのは立派な地位ですよ。私はといえば、コンヴィルの村長をしております。
ファトマ なんて言ったんだい?
ボーフランケ氏 ノルマンディーのコンヴィルの村長です。あなたのお国ではパシャのようなものですな。そうです、コンヴィルのパシャですよ、パシャ。
ラファエル 何がしたいんだい? もしあんたがシャ(ネコ)が嫌いなら、羽をむしってあげようか(29)
(ラファエルが片側から、ファトマが反対側から愛撫する。)
ボーフランケ氏(小さく飛び上がりながら、傍白) なんてアヴァンチュールだ! どうやら俺がお気に召したらしいぞ。(大声で)ああ! 奥様がた、私は……。(傍白)トルコ女ってのは熱狂的だ!
クレット・ド・コック(飲み物と共に入場し、すべてを落としそうになる) またラファエル! 俺は決して慣れることなんかない!
(テーブルにグラスを置いて逃げ出す。)
ボーフランケ氏(起き上がって) ああ! 奥様がた、そんなのの後では、十分に出来ますよ……。(後背位になったラファエルをつかんで)俺は不貞を働いている、だが構うもんか! トルコ女じゃないか。
クレット・ド・コック(敷居で)、気をつけて! 誰か来ましたよ。
(ボーフランケ氏は飛び上がり、ズボンを脱いだまま逃げ出す。)


第十九場
女たち、青年

女たち さあ入ってらっしゃいな、かわいい人、赤ちゃん、愛しい子、とっても淫らで、とってもいやらしいのよ。さあ、入ってらっしゃい、愛しい子、入ってらっしゃいよ。
クレット・ド・コック さあお入りなさいよ、このご婦人たちはとっても優しいよ。
青年(ドアのところでためらって) 入りたいと思ったら入るから、放っといてよ。
女たち とっても淫らで、とってもいやらしいのよ。
クレット・ド・コック 入りなさいよ、十分に満足しますよ。
女たち とっても淫らよ。入りなさい、入りなさいったら。
(青年は何も言わずに去る。)
女たち(全員で) ああ、もう! とっとと失せな!
ミシェ(入ってきて) なんだって?
クレット・ド・コック 出て行ったんですよ。
ミシェ このあばずれどもときたら、俺を破滅させるよ。今じゃ、客を追い出すってわけかい。まったく、痛い目を見るぞ。
クレット・ド・コック 今度は軍人ですよ。入らせましょうか?
ミシェ 様子を見よう。きっとたんまり持っているだろう。絶えず試みて、もっとうまくやるんだぞ。


第二十場
女たち、クレット・ド・コック、工兵

工兵 上にあがりますでしょうか?
女たち 誰? わたし? わたし? わたし? 選んでちょうだいよ、色男さん。とっても淫らで、とってもいやらしいのよ。
工兵 ああ! 選ぶのなんてどうでもいいのであります。あれをするには、あれもこれも変わりはありません。
ラファエル どちらにしてもよ。選んでよ、男前のブロンドさん。ラファエルにしなよ。
ファトマ ファトマにしなよ。
ブロンディネット ブロンディネットにしなよ。
女たち とっても淫らで、とってもいやらしいのよ。
工兵 繰り返して言うが、自分には一緒なのであります。
ラファエル もう! わたしたちをかつごうっていうんだね!
工兵 おお! そうではありません。次いで、女というものが馬鹿げたことをできないということを考慮するならばであります。
ラファエル それじゃあ、いらっしゃるのね?
工兵 もしあなたが上がりたいのであれば、太った女よ、私はあなたのキューピッドとなります。
クレット・ド・コック いつでもラファエル! 軍人さん、前払いが必要ですよ。
工兵 ほら、ほら。
(ハンカチを出し、端から金を取り出す。)
クレット・ド・コック さあさあ、軍人さん。
工兵 繰り返して言うが、私は君の求めに従うのであります。二十スー(30)であります。
クレット・ド・コック 二十スー! あっしたちを馬鹿にしてるんですか。
工兵 家に十スー、娘に十スーであります。
クレット・ド・コック でもここじゃあ、家に五フランですよ。
工兵 家に百スーなんて、とんでもない! クールブヴォワ(31)では家に十スーであり、いつでも工兵に優しい娘に、そうしようと思うなら結果として払うのであります。
クレット・ド・コック とにかく、ここでは五フランですよ。
工兵 私にはそれだけの正貨が欠けているのであり、繰り返して申しますが、お金を返してください。
クレット・ド・コック ほら、二十スーだよ。
工兵 なにか、夜の間に排尿する缶か、瓶かはございませんか。
クレット・ド・コック おまるかい。ほらよ!
工兵(ラファエルに) この瓶にいかほどか小便をしてもらえるほどお優しいだろうか。
ラファエル なんでだい? (小便をする。)はいよ。
(工兵は瓶を受け取り、ズボンのボタンをはずそうとする。)
クレット・ド・コック 何をしよってんですか?
ラファエル そこにオナニーしようってんだよ。
工兵 次いで、肉が高すぎたので、スープを飲ませてやろうというのであります。
クレット・ド・コック まったく、払いたくないんなら、そいつを置いて、ここから出て行きな。
工兵 百スーなんて、とんでもない。それはあんまりであります。
(退出する。)


第二十一場
ミシェ、女たち、クレット・ド・コック

ミシェ おいおい! 何があったんだ?
クレット・ド・コック 軍人が、クールブヴォワでのように十スーしか払わないって言ったんですよ。(傍白)ラファエルに十スー!!
ラファエル(ミシェに) 旦那さん、私たち、五分ばかりに部屋に戻ってもいいかい?
ミシェ お望みなら、部屋へ行くがいい。でも呼ばれたらすぐに降りられるようにしてなきゃ駄目だぜ。
(女たちが退出。クレット・ド・コックも続く。)


第二十二場
ミシェ

ミシェ(一人) また失敗か! 今晩はうまく行かないな。もしもレオンさんの件がなけりゃ、出費をまかなうことも出来ないよ。だがこいつはいい取り引きだ。こんなのがしょっちゅうあれば、田舎に引っ込むのもそう遅くはないね。金が出来たら、ブゾン(32)に小さな家を買って、一日中カヌーを漕ぐだろうね。俺はもう水の上でだけ生きて、生れ変わるのさ。


第二十三場
ミシェ、イギリス人

イギリス人 こんにちは。
ミシェ(傍白) ああ! イギリス人、もうけものだ。
イギリス人 ユーの建物を訪れたいです。
ミシェ なんなりとお申しつけください。
イギリス人 私、あなたのコレクション見に来たです。
ミシェ なんです?
イギリス人 コレクション。
ミシェ でも、あっしはコレクションなんか持ってませんよ。
イギリス人 あなたはまさしくムッシュー・ミューシェットですね。
ミシェ ミシェですよ。
イギリス人 オー、イエス! ヴェリー・グッド。ミシェ(33)。私、あなたの蝋人形コレクションで、出産する女の人形、アルコール漬けの胎児見に来たです。私の友だち、みんないい奴、とっても愉快、それあなた、ムッシュー・ミューシェットのところと言いました。
ミシェ ミシェ。
イギリス人 オー、イエス、ヴェリー・グッド、ミシェ。
ミシェ(傍白) ああ、なに考えてんだか! (大声で)お話ししましょう。私はまさしく蝋人形コレクションを持っていますが、まだ荷ほどきをしてないんです。
イギリス人 ニホドキ?
ミシェ そう、準備して、陳列するには少し時間が要るんですよ。
イギリス人 おお! 私、急いでません。
ミシェ それに、そいつには費用がかかるんです。あなたがとっても心がお広くないと、お見せできませんね。
イギリス人 おお! 私、あなたに、欲しいだけあげましょう。ほら。(彼はポケットから金を取り出す。ミシェは受け取る。)アーオー! それは高い(傍白)でも私は見れるでしょう。フランスではいつも見たいもの見ました。高かった、でも見ました。
ミシェ 結構。小さいサロンにお入りになれば、準備ができた時にお呼びしますよ。
イギリス人 オール・ライト。ありがとう、ムッシュー、ミューシェット。
ミシェ ミシェ。
イギリス人 オー、イエス。ヴェリー・グッド、ミシェ。


第二十四場
ミシェ、次いで女たち

ミシェ しこたま稼げるぞ。このイギリス人はなんとしても俺に蝋人形のコレクションを見せてほしがっているんだ。ソファーや椅子に座りな。動くんじゃないよ。じっとして、動いちゃいけない。
(彼は解剖学博物館のように蝋人形のポーズを取らせ、女たちを並べる。)
こんなもんだ。よし。動くなよ。呼んでこよう。


第二十五場
同前、イギリス人

イギリス人(女たちを調べて) アーオー! これはとてもかわいい、とてもかわいい、とってもしーぜん、とってもしーぜん、オール・ライト、オール・ライト。
ミシェ すべての人形は自然のものから型を取りました。これは人体の正確な再現ですよ、ご覧のとおり、何も欠けていません。
イギリス人(近くからラファエルを見て) オー! イエス。(離れて)彼女には匂いまであります。
ラファエル(傍白) おならしちゃったみたい。
ミシェ カタログがお望みでしたら、五フラン追加になります。
(イギリス人は五フラン払い、カタログをもらうために手を伸ばす。)
ミシェ ただ声でそれを言うだけです。まだ印刷ができていませんのでね。さあ、これはとても良い人体ですよ。十八歳で舞踏会で亡くなった若い女性で、立派な家に属し、妊娠していたんです。体形を隠すために彼女はコルセットを締め付けました。それが腸の損傷の原因となり、ある晩、先ほど述べたように舞踏会の後で亡くなったのです。
イギリス人(メランコリックに) アーオー! あなた方の偉大な詩人言ったようにですね。彼女は舞踏会を愛しすぎ、それが彼女を死なせたのです! では私は出産を見たいです。
ミシェ(傍白) ああ、ちくしょう! (大声で、ラファエルを見せて)さあ、こちらがデモンストレーションに役立つ人形です。
イギリス人 でも、プチ・ベイビー見えません。
ミシェ 説明しましょう。私の人形はとてもよく出来ているので、実物の身体のあらゆる働きを実行するのです。この人体は今朝出産したので、新しい実験を準備するにはしばらく時間が必要なのです。
イギリス人 オール・ライト! あなたのコレクションには処女もいると聞きました。
ミシェ おお! ここにはそれは絶対にいません。
イギリス人 オー!
ミシェ 絶対に。
イギリス人 それでは、私、性病を見たいです。
ミシェ おお! それはお見せできます。ちょうど昨日からそれがあるんです。(ブロンディネットを見せて)ご覧になって、お調べなさい。これも自然を写したとても良い見本です。
イギリス人 アーオー! これは好きでありません。あなたは男性の人形もお持ちではありませんか?
ミシェ ありますとも。とても良いものがあります。クレット・ド・コック、あれをお見せして。(クレット・ド・コックが登場し、奥のカーテンを開ける。)これは、男性器が三十二倍に膨らんだものです。
イギリス人(前でジーグを踊って) オー、とてもかわいい、オール・ライト。ああ! ムッシュー・ミューシェット、私とても恋しくなりました。これと愛を交わすことはできませんか……。
(彼はラファエルを指さす。)
ミシェ もちろん。ただ、それはいつでも私の人形を傷つけますから、十分に償ってもらえないなら、お任せすることはできませんよ。
(イギリス人は払う。)
クレット・ド・コック(笑って) イギリスのコート(訳注:コンドーム)はお望みですか?
イギリス人 オー、ノー! フレンチ・コック・コート! その必要ありません。
クレット・ド・コック(笑って) いつでも注意が必要ですよ。
ミシェ それに、それがあれば人体を傷つけませんや。
イギリス人 アーオー! 芸術を尊重してそうしましょう。
(クレット・ド・コックは血のついたコンドームを渡す。)
アーオー! これ駄目です。
(イギリス人は別のを取り、ラファエルの上に乗る。)
クレット・ド・コック ふん。またラファエルだよ。
イギリス人(やりながら) アーオー! とてもしぜーん。オール・ライト、オール・ライト、オール・ライト。(起き上がって)アーオー、とても満足しました。また来ますよ、ムッシュー・ミューシェット。
ミシェ ミシェ。
イギリス人 オー、イエス、ヴェリー・グッド、ミシェ。また来ますよ。
(イギリス人退出。ミシェも同様。)


第二十六場
クレット・ド・コック、女たち

クレット・ド・コック ああ! かわいそうな俺のラファエル、いつもあいつらの腕の中にいるお前を見るのがどれほど辛いか、お前が分かってくれたらなあ。
ラファエル(コンドームを顔に投げつけて) さあ、これを洗って、黙るんだよ。
(クレット・ド・コック退出。)


第二十七場
女たち、ボーフランケ夫人

ボーフランケ夫人 夫のボーフランケが呼んでませんでした?
ラファエル いいや、かわい子ちゃん。あなたはおとなしくしてればいいのよ。(他の者に)お呼びなのはあんたじゃないのさ。
ボーフランケ夫人(傍白) ああ! なんてことしちゃったんでしょう! ああ! レオン! 彼はシャンパンで私の頭をおかしくさせたのよ。夫に会ったりしませんように! 今、顔を見られたら、目の内にぜんぶ読まれてしまうわ。変な感じだわ!
ラファエル ああ! かわいい人、あなたにまた会えてなんて嬉しいんでしょう! 私の隣にお座りなさいな。
ボーフランケ夫人 あなたはとても親切ですわね、奥様。
ラファエル あなたの体形は魅力的で、足は愛らしいわ。他の部分はどうなのかしら? パリにいらしたことはないの? いつも田舎にお住まいなの?
ボーフランケ夫人 ええ、奥様。
ラファエル でもあちらじゃ退屈なさるでしょう。一日中、何をなさっているの?
ボーフランケ夫人 家のことをしていますわ。
ラファエル(とても優しく愛撫して) 私のしてること、お嫌じゃなくて?
ボーフランケ夫人 ああ! ああ! ああ! ああ!
ラファエル 待って、喜ばせてあげるわ。
(彼女にクンニリングスをする。ボーフランケ夫人は恍惚となる。ラファエルは身を引く。)
ねえ、同じようにしてくれる?
ボーフランケ夫人 おお! とてもできませんわ。もし明かりが消えていれば……。
ラファエル(女たちに) 明かりを消してちょうだい。
(明かりが消される。)


第二十八場
同前、ボーフランケ氏、次いでレオン

ボーフランケ氏 興奮してたまらん! あのオダリスクにもう一度会えたらな。
(手探りで入ってくる。女たちの間で動き。
彼は妻を捕まえ、抱いてソファーへと連れてゆく。)
ボーフランケ夫人 ああ! レオン!
ボーフランケ氏(仰天して) ボーフランケ夫人!
ボーフランケ夫人 夫だわ! ああ!
(動き。彼女は手探りでラファエルに会う。)
ああ! 助けて、助けて!
ラファエル 任せときな。(彼女はボーフランケ氏を探し、自分の腕に抱き寄せる。)いらっしゃいな、どうして止まってらっしゃるの? なんておっしゃったの?
ボーフランケ氏 驚いた。すっかり妻だと思ったぞ。
(彼はソファーの上でラファエルとやり始める。動きの間にレオンが
手探りで入ってきて、暗闇の中でボーフランケ夫人に出会う。)
ボーフランケ夫人(恐れて) 誰ですの?
レオン 僕ですよ、いらっしゃい。
ボーフランケ夫人 放っておいて、放っておいて。
(レオンは彼女をソファーに連れてゆき、彼女とやる。)


第二十九場
同前、ミシェ

ミシェ(入ってきて) 誰がここの明かりを消したんだ? 俺がそれを認めないのは知ってるだろう。クレット・ド・コック、明かりだ!
(クレット・ド・コック、燭台を持って登場。)
ボーフランケ氏 私の妻がレオンに抱かれている!
ミシェ ちくしょう、面倒だな。
(ボーフランケ夫人は卒倒する。)
レオン(ミシェに) ここから抜け出させてくれたら五ルイだ。
(彼は逃げ出す。)
ボーフランケ氏(妻に) ああ! 奥方よ、この罪深い行いには罰が下るだろう。
ミシェ 罰ですと、旦那様。だがあなたご自身が罰に値するのをご存知でしょうな。あなたがいる場所がハーレムであること、そこであなたがなさったことを考えていただきたい。トルコの法律はあなたに対する全権を私に委ねているのですし、その厳しさはあなたもご存じでしょう。
ボーフランケ氏 でも、あなた……。
ミシェ もしあなたのご利益になるような助言をさせていただくとすれば、スキャンダルを避けて、この一件をもみ消すことですな。さもなければ重大な結果をもたらすことになりかねませんよ。それに、あなたに対する私の心遣いにも報いていただきたいものですな。
ボーフランケ氏(金を払った後、妻に) 奥方よ、今晩のうちにコンヴィルに帰ろう。
(彼らは退出する。)


第三十場
同前、ボーフランケ夫妻を除く

ミシェ こいつはまだ何を望むんだ?
屎尿汲み取り人(酔いどれ) あっしはべん、べん、便所を空けに来たんじゃない(34)。し、仕事はおしまいだ。(歌って)
「俺はうんこにゃまっぴらだ
不都合が起こったもんでね。」
ミシェ それじゃあ、何がお望みだ?
屎尿汲み取り人 女が欲しい。
ラファエル おやまあ! なんてこと!
クレット・ド・コック 泣きっ面に蜂だよ。
ファトマ あんたとやるなんて、絶対やだよ。
ミシェ 無理だね、行っちまいな。
屎尿汲み取り人 なんだと、あっしのか……、あっしのか……、あっしの金は他の奴の金より劣るってのかい!
(彼はミシェに百スーを見せる。)
ミシェ もちろん、払ってもらえるならね。
ラファエル あたしは嫌だよ。
ファトマ 私もよ。
ブロンディネット 私だって。
ラファエル 汚すぎるわ。
ミシェ 汚すぎるだって! 上品ぶりやがって! (汲み取り人に)俺の意見は違うね。どうだい、あんた、この俺がやるってんじゃどうだい。
屎尿汲み取り人 そう、そう、相互になら。
ミシェ お望みどおりに。
屎尿汲み取り人 それじゃあ、行こう。
(ミシェと汲み取り人は退出。)
ミシェ(よろめきながら歌う汲み取り人を支えて)「ああ!俺はうんこにゃまっぴらだ
ふつ、不都合が起こったもんでね!」


第三十一場
女たち、クレット・ド・コック

クレット・ド・コック(ラファエルに) ああ! ラファエル、今度は俺の番だろう。
ラファエル あんただって、まったく! すぐかっとなるんだ、この子は。よく飽きもしないもんだ。人を当てにしたって駄目さ。
クレット・ド・コック これだ、だから俺は神学校の頃みたいに、まだオナニーしなきゃなんないんだ。ああ! ラファエル!
(閉幕。)


『バラの葉陰、トルコ館』(1875年)
Guy de Maupassant, Á la feuille de rose, maison turque (1875), dans Théâtre, éd. Noëlle Benhamou, Éditions du Sandre, 2011, p. 43-87.




訳注
(1) Miché : ミシェには俗語で「娼婦の客」の意味がある。
(2) Crête de coq : 「雄鶏のとさか」の意味だが「尖圭コンジローム」も表す。
(3) maison turque : フロベールの『感情教育』(1869) では、ゾライード・チュルクの営む娼館が「トルコ(チュルク)の家」と呼ばれていた。それに対するほのめかしが読み取れる。
(4) 原文は « Je suis le vi... le vi... le vi... » « Quel vit ? » « Le vidangeur. » vit は男性器を指す。
(5) 原文は « Non monsieur, je n'emmé... merde pas... Au con... au con... au contraire, je désemmerde ! » con に女性器の意味がある。また、emmerderは「糞で汚す」から派生して「うんざりさせる」の意味の語だが、それ対して汲み取り人は désemmerder(déは否定の接頭辞。造語)で答えている。
(6) Conville : con には女性器の意味がある。またボヴァリー夫人が住む町ヨンヴィル Yonville を想起させもする。
(7) 当時、サン=ラザールには刑務所があり、梅毒を罹患した娼婦を収容していた。
(8) 原文は « je serai pas occu… occu… occupé. » cu は cul「尻」と同音。
(9) 原文は « Si c'est pas à faire pi... pi... pitié. » pipiは「小便」を指す。
(10) maquereau には「サバ」と「女衒」との意味があるのにかけた洒落。
(11) フロベール『ボヴァリー夫人』の中でエンマの愛人となるのがレオン。ほのめかしか。
(12) Beauce「ボース地方」とbosse「こぶ」を掛けている。
(13) パリ北東部の町アスニエールに、「アスニエールの大排水溝」と呼ばれる下水収集管があった。
(14) feuille de rose : 俗語で肛門を舐めること、あるいはクンニリングスを指す。
(15) petit salé : 俗語で足の指を舐めること。
(16) levrette : 俗語で後背位を指す。
(17) postillon : セックス中に相手の肛門に指を入れること。
(18) gamin : 仰向けになった男に女が馬乗りになる姿態。
(19) soixante-neuf : 上下互い違いの姿態。モーパッサンに同題の詩篇がある。
(20) paresseuse : 横向きに寝て向かい合う姿勢。
(21) brouette : 女性が地面に手をついて手押し車の恰好し、男性が足を持つ。
(22) bouffer le chat : 俗語でクンニリングスを指す。
(23) 原文は « Garde à vous, peloton. » « Pelotez. » peloter は「愛撫する」を意味する動詞。
(24) 原文は « à la charge ? » に対し、« À la décharge. » と答えている。
(25) Mathusalem : イスラエル人の族長。エノクの子、ノアの祖父で、969歳まで生きたといわれる。
(26) égoutteur de goupillon : 俗語で売春宿の雇人を馬鹿にして呼ぶ。灌水器は俗語で男性器を指す。
(27) マルセイユ男の言葉は南仏風の話し言葉を模倣して書かれている。ここでは便宜上関西弁風に訳す。
(28) 一ルイは二十フラン金貨を指す。
(29) tailler une plume : フェラチオをすること。
(30) 一スーは五サンチームにあたる。二十スーは一フラン。
(31) Courbevoie : パリの城壁に接していた庶民的な町。兵舎があった。
(32) Bezons : パリ郊外アルジャントゥイユに近い、セーヌ沿いの町。
(33) « very good, Miché » は godemiché 「人工ペニス、張形」と音が似通っている。
(34) 原文は « les ca... ca... les ca... cabinets » . caca は「大便」を指す。




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