第178信 エミール・ゾラ宛

Lettre 178 : À Émile Zola



(*翻訳者 足立 和彦)

解説 フロベールの死後間もない時期と推定される書簡。『詩集』の宣伝に力を入れるモーパッサンの姿が窺われる。同時に『ゴーロワ』紙との契約を伝えており、ここから小説家モーパッサンの活動は本格的に始動することとなった。書簡後半ではフロベール哀惜の念が強く表明されている。


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[1880年5月]

 親愛なる先生にして友人
 ご援助願いたくお手紙さし上げますが、あなたがまずお約束くださったことなのです。それは、私の詩集について『ヴォルテール』紙のあなたの記事の中で少しばかり触れて頂きたいのです。『グローブ』紙に記事が出て、『ナショナル』紙にはバンヴィルのものが載り、大変称賛の籠った引用が二つ『タン』紙に、『セマフォール・ド・マルセイユ』紙に見事な記事、また別のものが『政治文学評論』誌に、愛らしい引用が『プチ・ジュルナル』、『XIX世紀』紙に等々・・・、そして昨晩はサルセーによる講演がありました。その上、売れ行きは好調で、初版はほとんど出尽くしましたが、残りの二百部を売り払うためにもう一援助欲しいのです。二版は準備できています。ラフィットは私に小説を求め、私は彼のためにそれを書きます。値段を決めるのは断りました。あなたにこの件でご相談したいからです。さらに、私はユイスマンスと一緒に『ゴーロワ』に入ったところです。それぞれ週に一本の記事を載せ、月に五百フラン手にできるでしょう。
 私がどれほどフロベールのことを思っているかはとてもお伝えできません。彼は私に取りつき、私を追ってきます。彼の考えは始終戻って来て、私は彼の声を聞き、彼の身振りを見出しますし、いつでも目の前に立って、褐色の大きな衣服を着て、腕を振り上げながら話している彼の姿を目にするのです。孤独のようなものが私の周りを覆います。恐ろしい別離の始まりで、今から年々歳々続いてゆき、愛している人を奪ってゆくのであり、その者の内に我々の思い出はあり、その者となら親密な事柄もよく話すことができたのです。こうした打撃が我々の精神を打ちのめし、何を考える際にも我々に持続的な苦しみを残します。
 さようなら、親愛なる先生にして友人、私の情愛と誠意の気持ちをお信じください。そしてゾラ夫人にも心からの敬意の籠ったご挨拶をお伝えください。

ギィ・ド・モーパッサン



Guy de Maupassant, Correspondance, éd. Jacques Suffel, Évreux, Le Cercle du bibliophile, 1973, t. I, p. 279-280.


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