モーパッサン「フォーヌの欲望」
« Désirs de faune », vers 1874
(*翻訳者 足立 和彦)
解説 1927年、ピエール・ボレルが「プチ=ブルー」ことレオン・フォンテーヌの協力のもとに執筆した『モーパッサンの悲劇的運命』Le Destin tragique de Maupassant (Les Éditions de France, 1927) に、無題で掲載された詩篇。1993年に原稿が競売にかけられたが、それには「ジョゼフ・プルニュエ、連合のメンバー、エトルタ号の指揮官、連合の秘密警察長官」と署名されている。
12音節(アレクサンドラン)、14行からなっている。
1870年代、モーパッサンはセーヌ川でボート仲間たちと、賑やかに、またしばしば猥雑に週末を過ごしていた。そこから猥褻な喜劇『バラの葉陰、トルコ館』が生まれるが、本詩篇も同様の雰囲気の中で書かれたものである。ここでは激しい性的快感が描写され、慎みのなさと荒々しさがとくに目を引く。「水辺にて」 (1876)以降のレアリスト詩人モーパッサンを予告する一篇と言えるだろう。
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フォーヌの欲望
フォーヌの欲望
僕に愛を啓示してくれた女性へ
おお! 肉が膨れ、立ち上がって燃え立つ時!
魂全体がそこにあり、張り詰め、あえいで、
頭は狂乱し――欲望に泡を吹いて、
これ以上に焼け付く快楽をどこに求めてよいか、
燃えるような舌を裸の股の間に差し入れればよいか分からない!
二本の腕は肉付きのよい尻の下でこわばり、
彼女を吸い、その匂いを嗅ぎ、舐め、
雄山羊とサチュロスの興奮で、
血まで吸い、ねじり、からみつく様は
人間蛸のようで、飲み――そして笑う
彼女の痙攣する様を。そしてその体を感じる
体は恐るべき快感の内に砕け、膨れ
痙攣、痙縮、激昂、
息詰まらせ、むせび泣き、野蛮な叫び声を上げてうなる!
「フォーヌの欲望」(1874年頃)
Guy de Maupassant, « Désirs de faune » (vers 1874), dans Des vers et autres poèmes, éd. Emmanuel Vincent, Publications de l'Université de Rouen, 2001, p. 220.
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Guy de Maupassant, « Désirs de faune » (vers 1874), dans Des vers et autres poèmes, éd. Emmanuel Vincent, Publications de l'Université de Rouen, 2001, p. 220.
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