モーパッサン「雪の夜」
« Nuit de neige », 1876
(*翻訳者 足立 和彦)
解説 1876年6月20日付『文芸共和国』La République des lettres に、ギィ・ド・ヴァルモン Guy de Valmont の筆名で掲載された詩篇(「日射病」、「恐怖」と同時掲載)。後に1880年『詩集』 Des vers に収録。
12音節、4行1詩節で、6節からなる。
複数の手稿の存在が知られている。内の一つは、決定稿では削られる4詩節を含み、「パリ(1872年)」の記述が見られる。削除された最後の2詩節は以下のようだった。
イダは僕に体を寄せて、ゆっくりと歩いていく
彼女の歯が鳴るのが聞こえる、それほどに風は冷たい
けれどもすっかり震えながら歩くのも、激しい喜びだ
というのも家では素敵な火がを待っているのを知っているから。
僕のベッドはとても暖かく、部屋はしっかり閉じられていて
二人で腰かける大きな肘掛け椅子は柔らかく
僕のそばには大好きな恋人がいて
外が寒い時には、人は一層愛しあうんだ。
この結末が削除されることで、詩は厳寒の光景を描くだけで終わることになった。結果として、この作品は、モーパッサンの詩の中で最も有名なものとなり、各種のアンソロジーにも採録されている。
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雪の夜
雪の夜
広い平原は白く、動きもなく、声もない。
物音もなく、何も聞こえない。全て生命は消え果てた。
だが時々、陰鬱な嘆き声のように、
行き場のないどこかの犬が森の隅で吠えている。
空にはもはや歌もなく、僕たちの足下には藁さえもない。
冬はあらゆる花の上に襲いかかった。
葉を落とした木々が地平線に立ち上がらすのは
さながら亡霊のようなその白い骸骨。
月は大きく蒼ざめ顔に道を急いでいる。
峻厳なる広大な空にあって、凍えているのだとも言えよう。
陰鬱な視線を地上に走らせ、
そして、何もないのを目にすると、僕たちから別れようと急ぐ。
そして月が投げかける光線は、冷たく僕たちの上に降り、
立ち去りながら振りまく、幻想的なる明かり。
そして雪は遠くに、青白い光の
奇妙な反射に、不吉に輝く。
おお! 小鳥たちにとっても恐ろしい夜!
凍った風が震えては道を走る。
彼らは、木陰なる揺りかごに避難もできず、
凍りついた脚の上で眠ることもできない。
霜の覆う大きな裸の木立の中
彼らはそこにいる、震えながら、何物にも守られずに。
不安気な目で雪を眺め、
夜明けまで、決して訪れぬ夜を待っている。
「雪の夜」(1876年)
Guy de Maupassant, « Nuit de neige » (1876), dans Des vers et autres poèmes, éd. Emmanuel Vincent, Publications de l'Université de Rouen, 2001, p. 52.
(画像:Source gallica.bnf.fr / BnF)
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Guy de Maupassant, « Nuit de neige » (1876), dans Des vers et autres poèmes, éd. Emmanuel Vincent, Publications de l'Université de Rouen, 2001, p. 52.
(画像:Source gallica.bnf.fr / BnF)
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